唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

SOME湾(湾! 湾!)

(水域面積が)ちっちゃくないよ!


 今回は『ラジオライフ』11月号掲載の『唐沢俊一のトンデモ都市伝説探偵団』「伝説その11 東京湾のシャコは何を食う…!?」を取り上げる。ちなみに、今回の唐沢俊一の近況は『ブロークン・ドイッチェ』の宣伝。もはやそっちが本業か。


 まず、少年探偵すばるがこんなことを言っている。

(前略)大沢在昌の小説では中国人マフィアが浮かんだりしてますけど、ドラム缶にセメント詰めにして沈められたりするのも定番ですよ。聞いたところでは東京湾で工事する業者はドラム缶が引き上げられても、いちいち警察に届けると工事が中断されるので、なかったことにしてまた沈めちゃうとか

 「中国人マフィア」限定でセメント詰めにされているのだろうか。星新一『進化した猿たち』では、夫が妻をセメント詰めにして殺すネタだけで一章を費していたっけ。アメリカ人、好きなんだなあ。


 この後、いわゆる「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の話になる。赤字はカラサワ探偵長。

この話で興味深いのは、最初は家の近くにそのドラム缶を捨てようとしたんだが、少年たちが“家の近くに捨てると化けて出るかもしれない。東京湾に捨てよう”と話し合ったと言うことだな。東京湾なら化けて出ない、という発想はどこから出たものか…


海は鎮魂の力がある、ということなのかもしれませんよ。(後略)

 ここを読んで本当にひっくりかえった。どうしてそんな話になるんだ? …いや、単純に「家から遠い場所に捨てたかった」だけでしょ? トンデモないな。
 ただ、このすぐ後に東京湾観音の話になるので、「だから、“海は鎮魂の力がある”とか言い出したのか…」とわかる。…驚異の構成力としか言いようがない。知っているネタをぶちこめばいいってもんじゃないって。

東京湾が(本当かどうかはしらないが)コンクリ詰めにした死体の投げ場として有名になったのは、この辺りが極めて複雑な地形を有しているからでもあるな。内湾(北側)は水深200m程度だが、南側の外湾に入るといきなり数百mから千mまで深くなる。ここに落ち込めば死体も滅多には上がらない。かなりヘンテコな生き物もいろいろいるらしいぞ。

 まず、東京湾の内湾の平均水深は17mで、最深部が70m第三管区海上保安本部海の相談室)。水深200mというのは動物相でいえば既に「深海」にあたり、深海生物(唐沢言うところの「ヘンテコな生き物」)が棲息している層である。
 もうひとつよくわからないのは、内湾にコンクリ詰めの死体を沈めたら外湾まで流れていくものなのだろうか。「内湾は浅く、外湾は深い」って別に「極めて複雑な地形」でもないしなあ。


 続いて、タイトルにある「東京湾のシャコは死体を食う」という都市伝説を否定した後、弟橘媛が身投げをした話になるが、ウィキペディアを見ればわかることしか書かれていない。

そうか。自動車ナンバーとして有名な“袖ヶ浦”というのは、弟橘媛の袖が流れ着いたという伝説からきた地名なのだな。現代人にも密接に関係している伝説といえるなあ

 地名の由来にいちいち感心していたらキリがない。それに、「船橋」「木更津」「富津」「国府台」もヤマトタケルに由来する地名であるとされている。千葉以外では「焼津」が有名だね。

東京は“あずまのみやこ”って意味ですが、“あずま”というのは日本武尊弟橘媛を偲んで“吾妻はや(わが妻よ)”といったことに由来しているといいます。そういう意味で、東京に住む者にとって、東京湾はまさに自分たちのルーツですね

 弟橘媛東京湾に身を投げた→ヤマトタケルが妻を偲んだことから「あずま」という言葉が生まれた→東京は「あずまのみやこ」→東京湾は東京に住む者のルーツ


 …どうしてそうなるのかまったく理解できないッッ! ガセ以前に文章力・論理的思考力がヤバいって。だが、カラサワ探偵長はこのように返している。

おい、すばる、今日は随分と冴えているじゃないか

 あまりにも冴えすぎである。東京が大好きなカラサワ探偵長はルーツである東京湾にお帰りになった方が…。


 今回はガセ以前にどうしてそういう展開になるのか?と驚くことが多かった。『ラジオライフ』の編集者は気にならないのかなあ。紙面を埋められさえすればいいというスタンス?
 まあ、「海には鎮魂の力がある」というのならゴジラがオキシジェン・デストロイヤーで倒されたのが東京湾であることにも触れておけばよかったのではないかと。東京湾観音といえば『千里眼』の水野美紀はよかったなあ、とかそんな具合に楽しい記憶を掘り起こしでもしなければやっていられない気分。人間はどこまで劣化できるものなのか。



作詞:サエキけんぞう

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