ちゅるや南北。
「やあやあ 伊右衛門くん伊右衛門くん」
「うらめしやー」
「まだ毒を飲ませてないよ」
「いわーん」
【盗作】 文を盗まず意を盗め。今やすべての小説は盗作である。
【盗用】 ①西洋の真似をすること。
②四小節までなら大丈夫。
③原典よりも面白くすること。
『乱調文学大辞典』『欠陥大百科』を読んだのがもう20年前かあ。…おっと、これも調べてみよう。
【追悼】 巨根だった故人を悼むのは追棹。
ありゃあ、じゃあ俺も「追棹」されちゃうなあ。…でも、みんなに棹を偲ばれるのも嫌だからやっぱり「追悼」でいいです。「追討」も勘弁してほしい。いずれ「唐沢俊一用語辞典」を作ろうっと。
本題。今回は『ラジオライフ』9月号に掲載された『唐沢俊一のトンデモ都市伝説探偵団』第9回「幽霊も呆れる!? 人間の欲望としたたかさ…」を取り上げる。少年探偵すばるのセリフは青字、カラサワ探偵長のセリフは赤字で表記する。今回、2人は四谷の田宮神社へと取材に行っている。
この神社にも由来を書いた文章がコピーされて“ご自由にお持ち下さい”と置かれてますよ。……えー、これによると、お岩さまってのは貧しい夫のために苦労して家計を助け、見事に家を再興させた、良妻のカガミということになっていますね
そのお岩さんが参拝していた屋敷社があったのが、ここのお稲荷さん。彼女にあやかろうとこの神社に参拝する善男善女で賑わっていた、江戸の人気スポットだったんだ。で、お岩の時代から200年ほど経った頃、歌舞伎作者・鶴屋南北が、ここを舞台に怪談の芝居を書いたらヒットするだろうと考えた…
まず、『四谷雑談集』という『四谷怪談』のモトネタになった書物の存在が書かれていないことが疑問。お岩さんが良妻だったら、どうして『四谷雑談集』みたいなおどろおどろしい話が出てくるのかわからない。次に、お岩さんが実は良妻で、田宮神社の人気にあやかろうとした南北が芝居を書いた、というのは全て田宮神社のパンフレットに書かれていることだが、実は田宮神社が『四谷怪談』の上演以前から人気があったことを証明する史料は存在しないという(上演以後の神社の人気を証明する史料は存在する)。…だから、唐沢俊一は「『四谷怪談』は本当は美談だった」とひっくり返したつもりだったのだが、実はさらにもう1回ひっくり返るのである。…っていうか、神社の公式見解を鵜呑みにする「探偵団」っていったいなんなんだ。
なお、田宮家が『四谷怪談』以降も存続していた、というのは三田村鳶魚『四谷怪談の虚実』で書かれていることだが、御家人の株が譲渡されて断絶していた家が再興されることは有り得るので、『四谷怪談』以降に田宮家が存在した(現在も続いている)からといって、『四谷怪談』が全くの虚偽とは言い切れない。
(前略)あ、そういえばこの神社の斜め向かいにも似たようなお稲荷さんを祀った陽運寺ってお寺がありますけど?
ああ、あれは明治時代に火災でこの田宮神社が焼けて、一時ここを移っていた時期に建てられたお寺でな、実はお岩さんとはあまり関係がない。ただ、今では互いに自分のところを本家だと主張しているようだが……
横山泰子によれば、明治13年に田宮神社が移転する以前から本家争いはあったとのことだが、「ぼちぼち、お散歩日記」というブログが田宮神社と陽運寺にそれぞれ直接質問している。当事者に話を聞いてみれば話はずっと深くなるので、プロならやってほしいところだ。
この後、「幽霊を商売に結びつける」というつながりで、八百屋お七の幽霊がお七の墓のある寺に現れて、500人の野次馬が押しかけラジオが実況放送をする騒ぎになった話が紹介されているのだが、どうもあまりいいつながりとも思えない。『四谷怪談』で押すか、『四谷怪談』以外の四谷の都市伝説を紹介したほうが自然だったと思うのだけど。ただ単に「知っている話を書いてみました」という感じが出てしまっている。
ちなみに、今回のエントリーを書くにあたって小池壮彦『四谷怪談―祟りの正体』(学習研究社)を参考にしたのだが、小池氏が「子供の頃、「四谷怪談」のせいで「四谷大塚」が怖かった」と書いてあったので笑ってしまった。俺も四ッ谷駅を利用する時、「南北線乗り換え」というのを見るとちょっとドキドキしてしまうので、その気持ちはよくわかる。
さて、本文より面白いプロフィール欄のコーナー。今月はこんな感じでした。
本文中にもある幽霊画などのコレクター、渡辺シヴヲ氏のコレクションを紹介した同人誌『百MONO語』を刊行します。本誌読者にも先着5名様までプレゼント! 欲しい方は編集部までご一報下さい。
ははあ、夏コミのネタはこれか。他人のコレクションの紹介というのが省エネっぽいけど。渡辺シヴヲという人は「劇団あぁルナティックシアター」にも出演したことがあるようなので、「あぁルナ」を中心にした勢力圏が唐沢俊一の最後の防衛線なのだな、とよくわかる。
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・初めての方は「唐沢俊一まとめwiki」、「唐沢俊一P&G博覧会」をごらんになることをおすすめします。
・1970年代後半に札幌でアニメ関係のサークルに入って活動されていた方は下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。
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