死闘! 神よ、カラサワのために泣け!!
「われわれがしなければならなかったのは検証することじゃない。愛し合うことだった!」
…本気にしないように。
今回は『パチスロ必勝ガイドNEO』8月号掲載の唐沢俊一『エンサイスロペディア』第39回「宇宙戦艦ヤマト」を取り上げる。
…いやあ、ついに来たね。いつも「『ヤマト』はわしが育てた」とか言ってる唐沢俊一ならさぞかし濃い文章を書くのだろう…と思っていたら、びっくりするくらい無味乾燥な内容だったので一読して呆然としてしまった。典型的な「面白い物語の面白くない紹介文」という感じ。
当時、日本はSFブームに沸いており、この作品もその一環として制作されたものだった。現にこの作品が日曜夜7時半日本テレビ系で放映されたとき、TBS系では裏番組で小松左京原作のSFドラマ『猿の軍団』が放映されており、さらにヤマト放送後の夜8時からは、これまた小松左京原作の『日本沈没』がテレビ放映されていた。また、『日本沈没』は映画でも好調で、1974年の日本映画の興行成績第一位となり、第二位は『ノストラダムスの大予言』であった。……これを見ると、SFとは言っても破滅ものや異世界ものが主流であり、人々が“いいSFとはそういうもの”と思っていたことがわかる。宇宙空間で宇宙船同士が戦うような作品は低級視されていたのだ。その意味ではヤマトはまだ、お子様向けの作品とされて、大きな期待はかけられていなかった。
まず、『猿の軍団』の原作者は小松左京・田中光二・豊田有恒の3人。豊田有恒は『ヤマト』にも参加している。それと、『日本沈没』『ノストラダムスの大予言』と来ると「SFブーム」というよりは「終末ブーム」のような気がする。挙げられている作品の中に「異世界もの」が無いのでは。ついでに書いておくと、『アルプスの少女ハイジ』も『ヤマト』の裏番組。
そして、「宇宙空間で宇宙船同士が戦うような作品」がそもそも70年代にそんなにあったのか?というのも疑問だし、「いいSF」というのにも「?」となる。
だが、われわれの前に登場したのは、子供向けアニメとしては異例の重厚なSF設定と、松本零士&スタジオぬえのデザインによるメカニック描写にあふれた、驚くべき作品だった。筆者は今でも覚えているが、放映初回のオープニングで、乾き果てた海底の土中からヤマトが姿を現し、そこにタイトルが立ち上がったのを見たとき、全身が総毛だったものである。
今回のコラムで唯一情熱を感じるくだり。でも、「総毛だった」にもかかわらず、「ヤマトのファンでも何でもなく」と過去に書いているので、素直に信じられないのが悲しい(詳しくは2008年10月28日の記事を参照)。
この後、『ヤマト』がオタクを生み出し定着させたとか、「SFの魅力は“絵”にある」と野田昌宏みたいなことを書いている。
その後、『スターウォーズ』旋風が世界中を席巻し、SF映像作品がほとんどその影響下におかれてしまった時、日本のアニメだけが独自の路線を保てたのは、スターウォーズに先駆けて日本アニメは優れた宇宙SF作品を作っていたのだ、という自信を持っていたためかもしれない。
この部分は池田憲章が『平成極楽オタク談義』第一夜で語っていたことに影響を受けているのかもしれない。池田憲章は『スター・ウォーズ』と富野由悠季作品を対比させて語っていたので、文脈はだいぶ異なるのだけど。日本の映像作品でも『スター・ウォーズ』に影響を受けたのはいくらでもあるんだけどね。画面の上から巨大宇宙戦艦が現れる作品はどれくらいあるんだろ。
でもマネしたくなるのはわかる。
そして、この作品が初放映では視聴率がふるわず打ち切りになったことで、全国のファン同士が連帯するようになった。再放送嘆願をテレビ局に提出するには組織票が必要となり、ファングループがいくつも立ち上がり、それらの会員同士の連絡のために、会誌と称する同人誌作りが活発になっていった。これまた世界に冠たるオタク文化のひとつであるコミックマーケットの第一回開催は、このヤマト初放映の翌年、1975年のことである。
パチスロの世界にかつてブームを呼んだアニメ作品が登場するのはもはや珍しいことでもなくなっている。しかし、このパチスロ「宇宙戦艦ヤマト」に関しては、打つたびに独特の感傷にひたってしまうファンも多いことと思う。ある世代にとり、それは伝説なのである。
…あれ? 自分のサークルが『ヤマト』のブームが起こした話をしてないよ? 鉄板の持ちネタを披露する絶好の機会なのに、どうしてなんだろう。不思議だなあ。
毎度のことながら、今回の『エンサイスロペディア』を読んでも『宇宙戦艦ヤマト』本編に対してまったく興味がわかないから困る。『ヤマト』の歴史的意義ばかり強調されてもなあ。それも正しいのかどうかわからないし。マニア向けなのか一般の人向けなのかハッキリしないのもいつも通りだ。かつて『ヤマト』のファンだったというなら実体験を含めてもう少し情熱を持って書いて欲しかった。…そういえば『復活編』とかキムタク主演の実写版について全く触れていないな。
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