唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

Kの墓碑銘。

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・初めての方は「唐沢俊一まとめwiki」「唐沢俊一P&G博覧会」をごらんになることをおすすめします。


 かつて唐沢俊一に文章をパクられた「座敷浪人の壺蔵」さんが本を出されました。おめでとうございます!

怪の壺

怪の壺

 それから、東浩紀氏が三島由紀夫賞を受賞されたとのことで、どうも唐沢俊一から被害を受けた人は運が上向く法則」でもあるのか?という気がしてくる。


 唐沢俊一はB級映画の関係者の追悼録『Bの墓碑銘』を同人誌で出しているが、今回は中巻(2004年・2005年版)からポール・ウィンフィールドの「追討」を取り上げてみる。P.20〜23より。

 私が意識して映画館に足を運び始めた1970年代後半、ポール・ウィンフィールドはまさにその時代を代表する黒人俳優だった。『サウンダー』(1972,「Sounder」)で、黒人俳優としては三人目になるアカデミー主演賞の候補になり(前の二人はシドニー・ポワチエジェームズ・アール・ジョーンズ)、白人と黒人の間の対立と友情を描いた『コンラック先生』(1974,「Conrack」)でも黒人側の代表として登場し、テレビのミニシリーズではあったが『キング』(1978)では、黒人解放運動のカリスマであるマーティン・ルーサー・キング牧師の役を演じ、黒人俳優なら出演をしないと言う感じだった『ルーツ』にも、その続編『ルーツ2』(1979。ちなみに原題は「Roots The Next Generations」。スター・トレックの「ネクスト・ジェネレーションズ」はこのパロディというか真似である)で出演し、虐げられた黒人の権利脱会(原文ママ)を訴える、怒れる世代の代表として、このまま、現代アメリカを代表する黒人俳優になるか、という勢いだった。

 …えーと、“Next Generation”って普通に「次世代」を意味する言葉なんじゃないかなあ。ボーイング737NGとかNGNとかあるんだし。なんでパクリになるのか。まあ、『ルーツ』でクンタ・キンテを演じたレヴァー・バートンが『TNG』ではラフォージを演じているので、完全に無関係とは言えないんだろうけど。

もともとは舞台俳優で、『ロッキー』のトレーナー役で有名なバージェス・メレディスが脚本・演出をした独り芝居の主演に抜擢されて人気となり、次ぎ(原文ママ)にやはりメレディスの舞台で大ベテランの名優ゼロ・モステルと互角に渡り合う芝居を見せてブレイク、そのままハリウッドに招かれたというだけに演技の実力は抜群、特に声とエロキューションはずば抜けていた。

 ここはIMDbの文章をそのまま訳している。

Paul's first big break came in 1964 when actor/director Burgess Meredith gave him a role in Le Roi Jones' controversial one-act play "The Dutchman and the Toilet." Director Meredith cast him again four years in "The Latent Heterosexual" with Zero Mostel. Although he won a contract at Columbia Pictures in 1966 and built up his on-camera career with a succession of TV credits, he continued to focus on the legitimate stage. A member of the Stanford Repertory Theatre, he concentrated on both classic and contemporary plays. In 1969 Paul joined the Inner City Cultural Center Theatre in Los Angeles for two years, which offered a drama program for high school students.

『Bの墓碑銘』の巻末に参考サイトとして「IMDb」が紹介されているんだけど、そのまま訳するのはどうかなあ。

……ところが、そんな彼が、80年代に入って、急に失速を始めるのである。『スタートレック/カーンの逆襲』(1982,「Star Trek:The Wrath of Khan」)では、カーンの精神寄生虫に身体を操られてカーク船長を殺すよう命じられ、自殺するタレル艦長、『ターミネーター』(1984,「The Terminator」)では、未来からやってきたターミネーターが電話帳を調べて、サラ・コナーという女性を次々殺していく殺人事件を調べるトレクスラー警部補。どちらも特別出演格ではあったが、“別にウィンフィールドがやらなくちゃいけない役じゃないし、役としちゃ小さ過ぎないか?”と思えるようなものだった。かつての、あの、黒人たちの怒りを代表していたウィンフィールドはどこへ行ってしまったのか?という感じだったのだ。

 トラクスラー警部はいい役だと思うがなあ。なんで文句をつけるのかわからん。全くの余談だが、“Traxler”といえば昔ダイエーホークスにいたトラックスラー(亡くなっていたのか…)と同じ名字だし、トラクスラー警部の相棒であるランス・ヘンリクセン演じるブーコビック刑事は“VuKovich”なので、こっちも昔西武ライオンズにいたブコビッチと同じ。思いがけずエキサイティングリーグ・パ!な気分。

 この後、唐沢俊一はウィンフィールドがパッとしなくなった理由(あくまに唐沢にとっての話だが)を語っている。

まず、言われているのが、彼が1977年に出演した映画『世界が燃え尽きる日』(原文ママ)(「Damnation Alley」)の呪いだ、という説。この映画に関わった人々は、みな、その後パッとしなくなっているのだ。まず、監督のジャック・スマイトは、『動く標的』や『いれずみの男』などという佳作を次々に撮って評価の高い人だったが、この作品を最後に、話題になるような作品は撮れなくなり、2003年に死去。主役のジャン・マイケル・ビンセントはこの映画で初の大作の主役を演じ、『ビッグ・ウェンズデー』で一躍大人気を得るチャンスをつかむものの、それを生かせず鳴かず飛ばずに。ヒロインのドミニク・サンダ、少年役のジャッキー・アール・ヘイリーも結局大成できずに終った。この呪いをウィンフィールドも受けているというのである。

 『世界が燃えつきる日』の呪いなどはない。何故なら、ジャッキー・アール・ヘイリーは現在大活躍中なのだから。なんてったってウォッチメン』のロールシャッハだし、リメイク版『エルム街の悪夢』では2代目フレディを演じているのだ。…最高じゃないか!(B級映画ファン的に)
 もっとも、『Bの墓碑銘』は2007年夏に出されているので、ヘイリーの活躍を予想するのは難しかったかもしれない(なお、日本で2007年夏に公開された映画『リトル・チルドレン』でヘイリーは幼児性愛者を怪演している)。だから、この文章で問題なのは、他者に対して簡単に「鳴かず飛ばず」「終った」などと言い切ってしまっていることだと思う。

※追記 ジャッキー・アール・ヘイリーは『リトル・チルドレン』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされている。アカデミー賞の発表は2007年2月だったので、『Bの墓碑銘』中巻を出すまでにヘイリーの活躍を知ることは十分可能だったものと思われる。

それは冗談にしても、77年と言えば『スター・ウォーズ』の大ヒットで、ハリウッドが次々とSFX映画製作に乗り出していく時代。アメリカン・ニュー・シネマの、多国籍国家であるアメリカの問題と苦悩を直視する、といった感じの、演技派ウィンフィールドが得意とする分野の映画がそもそも、作られなくなっていったのだろう。また、皮肉なことに70年代のウィンフィールドたちの運動により、アメリカ社会にはポリティカル・コレクトネスのような風潮が広がり、少なくとも表向きには、人種問題などをアメリカ社会が乗り越えたような感覚に国民が陥ってしまった。そして、エイズの蔓延。ウィンフィールドはそれを他人ごとでなく感じていたに違いない。彼はゲイだったからである。しかし、ゲイであることを隠しはしなかったものの、彼は請われても、ゲイ解放運動の表には立とうとしなかった。かつての、黒人解放運動の、挫折とも言えない消失の仕方に、こういう公民権運動というものに疑いを感じていたからかも知れない。もちろん、これらも外部から想像しただけの、勝手な思い込みなのだが。

 「そうかなあ?」「本当かなあ?」と疑問を感じながら読み進めていて、最後でズッコケてしまった。「勝手な思い込み」かよ! エイズがゲイの病気であるかのような書き方が気になるし、ゲイ解放運動と公民権運動は少し違うように思うのだが。

とにかく、ウィンフィールドからは、オーラが消えた。そして、それから2005年の死去まで、彼はアニメ『スパイダーマン』『バットマン』『シンプソンズ』などの声の出演や、『マーズ・アタック!』のアンクル・トム将軍などという自己パロディをこなして一生を終るのである。マイク・タイソンの伝記ドラマにおけるドン・キング役など、ときにかつての栄光の輝きをちらりと見せることはあったが、しかし、70年代のカリスマ性は、ついにもどることがなかったのである。

 『マーズ・アタック!』でポール・ウィンフィールドが演じているのはケイシー将軍。火星人と握手しようとして殺されちゃう人ね。…いい役じゃないか。
 唐沢俊一は80年代以降のウィンフィールドを貶してばっかりいるけど、ウィンフィールドは1995年にエミー賞のゲスト男優賞を獲得しているから、ちゃんと評価されていたと思うし、唐沢流の「昔はよかったけどダメになった」という論法はやはり読んでいて気分のいいものではない。書いていて楽しいのかも疑問だ。…まあ、『Bの墓碑銘』ではこの手の文章はチラホラ出てくるので、今後取り上げていきます。

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