これは怪しい紙芝居。 - 唐沢俊一検証blog

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　『読売新聞』2006年8月6日日曜版1面のシリーズ企画『夢塾』で「自分の言葉で紙芝居　1年続いた“不入り”　独学で演じ方練習」という記事が載っていた（担当は小梶勝男記者）。記事の後半部分を引用する。

　入場料を取ってステージなどで演じる「イベント紙芝居」も上演の機会が増えている。その第一人者が梅田佳声さん（７８）だ。約600枚、通しで3時間という大作「猫三味線」の演じ手として知られている。
　作家の唐沢俊一さんはその芸にほれ込み、佳声さんの口演にドラマを挿入したDVD「猫三味線」（エースデュースエンタテインメント）をプロデュース。佳声さんの評伝『紙芝居であります！』（清流出版）も執筆、来月初旬に出す。今月下旬には作家の山田誠二さんによる小説版『猟奇怨念因果物語・猫三味線』（エンタイトル出版）も出版されるなど、盛り上がりを見せる。
　唐沢さんは「紙芝居をレトロでなく、古典落語や講談に匹敵する一流の芸として発展させていこうという姿勢が素晴らしい。また、『猫三味線』は紙芝居の最高傑作の一つ。後世に伝えていきたい」と話す。
　かつて「低俗」とされた紙芝居が、「芸術」と認められつつある。

　「ケロロ　紙芝居であります！」とか言いたくなるな（渡辺久美子の声で脳内再生中）。「紙芝居であります、隊長！」だとこのみだ。あと、ヴィルヘルミナとか、『フータくん』のテツカブはマニアックかな。…口癖が「○○であります」のキャラって結構いるけど、まだ誰か忘れているような…。
　無駄話はさておき、この『紙芝居であります！』、実は現在も出版されていない。2006年9月に出るはずだったから、実に3年半も延期していることになる。素人から見ると来月出るはずだった本が出ないというのは結構大変な出来事のような気がする。清流出版のブログを見る限り、2005年11月の時点では2006年春に出ることになっていたようなんだけど。…これに比べれば、『本を捨てる！』は2ヶ月しか延期していないんだからまだまだ甘いのかもしれない。ただし、『紙芝居であります！』だけでなく、山田誠二の小説も出ていないので、延期については唐沢俊一ひとりの責任ではないのかもしれない。「エンタイトル出版」という出版社は初耳だったので「『週刊ツーベース』とか出しているのかなあ？」とか思ってしまったり。

※追記　去年発売された山田誠二『妖奇怪談全集ーひとりで夜、読むな!-』（ビジネス社）に『猟奇怨念因果物語猫の怪』という「絵物語」が収録されているとのこと。

　それにしても、『紙芝居であります！』が「評伝」となっていることが気になる。何故かというと、唐沢俊一は『古本マニア雑学ノート2冊目』（ダイヤモンド社）の中の自著紹介で、『星を喰った男』を「評伝」としているのだが、『星を喰った男』は潮健児が自らの半生について書き綴った本で、唐沢俊一の「評」など全く入っておらず、「評伝」とはとても呼べない本なのだ。そのほかにも『星を喰った男』には問題がありすぎるので、2008年12月29日の記事を参照していただきたい。それから、唐沢俊一は『ガメラを創った男―評伝映画監督湯浅憲明』（エンターブレイン）という本の編著もしているが、この本も湯浅憲明のインタビューが大部分を占めているため、「評伝」とは言いがたい。…唐沢は「評伝」について誤解しているのだろうか。なお、『ガメラを創った男』は現在『ガメラ創世記―映画監督・湯浅憲明』と改題されてアスペクトから刊行されている。
　…だから、唐沢俊一が梅田佳声の「評伝」を書くことにはなっているが、結局のところ「評伝」ではなく、梅田佳声のインタビューをもとにした本を作るのではないのか？という気がする。「評伝」なら話をまとめるだけじゃなくてきっちり批評もしなきゃいけないんだけどね。そこのところは気になる。…それ以前に本が出てくれないことには「評伝」になっているのかどうか判断のしようもないので、頑張って刊行してほしい。本当に「後世に伝えていきたい」と考えているなら、うやむやにしてはいけないだろう。あ、もちろん『本を捨てる！』もちゃんと出してね。