唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

( ゚∀゚)o彡゜ぽっぱい!ぽっぱい!

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 今回は『パチスロ必勝ガイドNEO』6月号に掲載されている唐沢俊一『エンサイスロペディア』第37回「ポパイ」を取り上げる。
 今回のコラムはいつもと比べるとまとまりのある印象である。唐沢俊一はかつて「アニドウ」に所属していただけあって、海外アニメにはさすがに詳しいのかもしれない。…とはいえ、コラムに登場する情報の多くがウィキペディアに出てくるものであることは多少気になるのだけど。以下の情報がウィキペディアとカブっている。

・ポパイは最初脇役として登場した。
・ポパイのおかげでほうれん草の消費量が増えたことを称えてテキサス州にポパイの像が建っている。
ロビン・ウィリアムス主演で実写映画化されている。
・戦時中、ポパイは日米両国でプロパガンダ漫画・映画に登場している。

 なお、ウィキペディアではポパイが初めて登場した作品の名前が『シンプル・シアター』となっているが、“Thimble Theatre ”なので『シンブル・シアター』が正しい。
 一方、ウィキペディアに出ていない情報としては、

・戦前、上山草人主演で実写版『ポパイ』が日本で作られていた。
・ポパイの口癖である「なんてこったい!」は浦野光が考えた。

 くらいだが、実写版『ポパイ』(『娘たずねて三千里』)について、

もちろん、まだ著作権の意識がほとんどない時代だから出来たことではあるけれど(後略)

と書いてあったのには笑ってしまった。21世紀になっているのに著作権の意識がほとんどない」人がこういうことを書くのかと。


 …さて、今回のコラムにもやはり妙な部分があるので紹介していく。

ちなみに言うと、マンガ版では最初、ポパイはキャベツを食べて強くなっていたのだが、アニメでは音声を入れなくてはならない。“キャベージ”では音の響きが悪い、と考えた演出家が、ポップに響く“スピナッチ(ほうれんそう)”を採用し、ポパイがピンチに陥ったとき、カンヅメのほうれんそうを食べて大活躍、という基本パターンが出来上がった。

 では、『ポパイ』のアニメ第1作である『船乗りポパイ』を御覧になっていただこうか。

ベティさんも出てくる。

 この作品の中で“spinach”という単語はおなじみのテーマソングの歌詞の中でしか登場していない。…だから、そんなに言葉の響きを重要視しなくてもいいような気もする。しかし、“cabbage”の音の響きが悪くて“spinach”の響きがポップだというのは本当なのだろうか。“Cause I eats me spinach”が“Cause I eats me cabbage”になっても全然問題ないと思うけどなあ。マックス・フライシャーが本当にそんなことを考えていたのか、疑問である。
 なお、まったくの余談だが、この記事を書く前に『船乗りポパイ』を見ていたら、橋を落とされた後のステキな展開に思わずニコニコしてしまっていたらしく、一緒に住んでいる女の子に「とうとう病んだの?」と呆れられた。…いやいや、今週の火曜深夜は「律っちゃんはキース・ムーンが好きなのかー」とニヤニヤしてたから、あれに比べれば快方に向かっていると思う(唯ちゃんはウインドミル奏法をしていたのにThe Whoを知らないのか)。…まったくもってフォローになってないよ!
 無理矢理話を戻すと、「ポパイは最初キャベツを食べていた」という話はネット上でわりと見受けられる。たとえば、「知泉wiki」には次のようにある。

•で、ポパイと言うと「=ほうれん草」と言うイメージですが、最初の新聞連載の時点では危機一髪の場面になるとパワーアップアイテムとして食べていたのはキャベツでした。
初期連載では、危機に直面すると相棒が遠くから投げつけたキャベツを食べて怪力を得るという設定になっていたのです。
•ところが人気が出たので、1933年にフライシャー兄弟というアニメ制作者が短編アニメをシリーズとして制作する際、もう一度設定を見直そうということになったのですが、「キャベツというかなり大きい物を相棒がいつ手に入れるのか、どこに隠し持っているのか?」と言う問題が出たのです。
それが不自然だという事になって、考え出されたのが当時アメリカでは一般的だった「ほうれん草の缶詰」。これならば携帯していても問題がない。と言うことでキャベツからほうれん草へと設定が修正されたのです。

 唐沢俊一の説よりはだいぶ説得力を感じる。確かにふところからキャベツを取り出すのはおかしな感じだ(カンヅメもちょっとヘンだけど)。
 ところが、この「ポパイは最初キャベツを食べていた」という話の根拠が見つからないのだ。ポパイくらい有名なキャラクターならすぐにわかると思っていたのに、結構調べても出てこない。で、マックス・フライシャーの息子であるリチャード(言うまでもなく映画監督のリチャード・フライシャー)が書いたマックスの伝記『 マックス・フライシャー/アニメーションの天才的変革者』(作品社)をチェックしたら「ポパイはマンガでは魔法のめんどりの頭をなでてパワーを得ていたのだが、アニメにするにあたってめんどりの代わりにほうれん草でパワーアップすることにした」という風にあったのでビックリした。…め、めんどり? この話はwikipediaにも載っている。

Popeye is depicted as having superhuman strength, though the nature of his strength changes depending on which medium he is represented in. Originally, the comic-strip Popeye gained his strength and invulnerability in 1929 by rubbing the head of the rare Whiffle Hen. From early 1932 onward, especially the cartoons, Popeye was depicted as eating spinach to become stronger. The animated shorts depicted Popeye as ridiculously strong, but liable to be pummeled by the much larger Bluto before his eating of the spinach.

“Whiffle Hen”が「魔法のめんどり」。こっちのサイトでは画像つきで紹介されている。
 …とはいえ、ポパイがキャベツを食べていた可能性もまだ捨てきれないので、何か御存知の方は情報をお寄せ下さい。…まあ、唐沢俊一の説はこの時点でかなり怪しいんだけど。

※ 安岡孝一先生が『シンブル・シアター』を確認したところ、ポパイはアニメ化以前にほうれん草を食べるようになったとのこと。


 もうひとつ妙な部分。

 (前略)戦後の昭和30年代、ポパイのアニメはテレビ用に再編集されて、日本の茶の間に流れ、たちまちのうちに、再び日本の子供たちの心をつかんだ。戦前にポパイのファンだった大人たちも、ポパイであれば、と安心して子供たちにこの作品を見せ、このヒットが、日本にもこのような、子供たちに人気の出るアニメ作品を作ろうという気運を盛り上げていくことになった。後のアニメ大国・日本は、ポパイに刺激されて出来たのである。

 …ホントかなあ? 当時は他にもいろんな海外のアニメが入ってきていたと思うのだけど。あまりに単純化しすぎているように思う。


 ついでに気になったところ。

 しかし、歴史は残念なことに、その後、日米の間に戦争を経験する。

 もしかしてこれが「悪文」ってやつなのか。


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