誤変換は血を凍らす。
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唐沢俊一は「裏モノ日記」を現在休止しているが、どういうわけか評判のよくない「追討」だけは引き続き「同人誌」のコーナーで行っている。そのうち『Bの墓碑銘』の続きとして出す気なのだろうか。
アンドリュー・コーエン(ケーニッグ)の「追討」などは、役者として大成しなかった二世俳優はみんなこんな風に書かれるのかな、と思われてあまり愉快ではない。彼は俳優以外の活動もしていたようだし、自殺の原因は鬱病にあるようなのだが。
南方英二の「追討」より。
古いと言えばその体質自体も古かった。
叩かれ役としていい味を出していた伊吹は金銭的にルーズで大借金を
こしらえて吉本を追放、結城哲也は暴力団との交際をマスコミに叩かれて
これまた吉本を解雇、頭の南方自身も、事件こそ起こさなかったが競艇
マニアで、競艇に入れ込みすぎて家を二軒も手放すといったほどのハマり
ようだったそうだ。困ったもの、と現代ではとられようが、昔は芸人なんて、みんなこんな
ものだった。と、いうか、一般的常識が欠けていればいるほど、
舞台の上でその芸は光った。社会のワクに縛られている人たちが、
やろうとしてもできない、そのワクの徹底した無視の代行こそが、
芸人の存在意義だった。デタラメに人生送れば送るほど(原文ママ)、観客に
ストレスを解消させ得るのである。浮気をしただけで糾弾される、今の
お笑い芸人に、その能力はない。
「芸人に常識を求めるな」という唐沢俊一の好む論法である。しかし、「一般的常識が欠けていればいるほど、舞台の上でその芸は光った」というのは粗雑な考え方である。常識もなければ芸もない芸人だっているだろう(むしろそっちの方が多いかもしれない)。唐沢俊一は「非常識」に憧れがあるようで、そのせいか常識を軽視した文章を書きがちなのだが、今回もその一例と言えるだろうか。…というか、南方英二は競輪にハマっていたようなのだが。棺には車券も入れられたというし。
あと、『空飛ぶモンティ・パイソン』は北海道で放送されていたのか?という疑惑があるのだが、締めの文章にも気になる点がある。
この歳になってしみじみわかるのは、世の中、新しいものだけでは
成り立っていかない、ということ。
いつも同じものを、同じところでやっているということが、いかに
古い観客を安心させ、新しい観客のアイデンティティを形成させるか
ということである。
昭和という時代がつくづく懐しいのは、激変の時代であった一方で、
変わらぬ文化というものがちゃんとあった、という理由によるだろう。
チャンバラトリオは、メンバーは上記のような理由でしょっちゅう
入れ替わっていたが、やっていることにはいつでも同じ、定番の安心感が
あった。訃報を聞いて奇妙な不安感にとらわれるのは、単に一芸人の死と
いうだけでなく、その”いつもあったもの“の喪失感によるものなのだろう。
合唱。
「昭和という時代」とひとくくりにされてもなあ、と思う。たとえば、50代の唐沢俊一の「昭和」と30代の自分の「昭和」は全然別物なんじゃないかなあ。まして戦前を知っている人もいるのだしね。あと、「奇妙な不安感」というのが唐沢俊一が訃報を好んで取り上げる理由なのかもしれないが、しかし、唐沢はずっと「昔はよかった。それにひきかえ最近は…」と言ってる人だったから、10年以上「喪失感」を味わいっぱなしのような気もする。「ガンダム論争」や「アニドウ」の同人誌でもそういった感じはあるし、「ガンダム論争」でおなじみの「欧米の作品を賛美して日本の作品をクサす」のと「過去を賛美し現在を否定する」というのは、実はきわめてよく似た心理の産物なのだと思う。まあ、昭和を懐かしんでいるわりに『昭和ニッポン怪人伝』が間違いだらけなのは謎だけど。
…で、「合唱」の件は一応指摘しておかなきゃいけないかな。もちろん「合掌」の誤変換だろう。「お前が歌うんかい!」とか「まだ歌うところじゃない!」とか突っ込んであげるべきなんだろうか。どうして肝心なところでミスをするのかなあ。忙しいなら「追討」も休んだ方がいいと思う。
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