唐沢俊一のネタの使い回し・その9。
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今日発売の『フィギュア王』№145に掲載されている『唐沢俊一のトンデモクロペディア』第58回「姉さん女房万歳!」を本屋で立ち読みしたときにデジャブに襲われた。
「この文章、どこかで見たことがある…」
やはり今日発売の『熱写ボーイ』と『まんが極道』4巻、それに他の資料も一緒に買って「検証ってお金がかかるなあ」と涙目になって帰宅(ちなみに明日は『ラジオライフ』が出るorz)。さっそくスクラップ帳をチェックしてみると、「姉さん女房万歳!」は『フィギュア王』№125に掲載された『唐沢俊一のトンデモクロペディア』第38回「あいつはあいつは可愛い……」の使い回しであることがわかった。唐沢俊一がネタの使い回しをするのは珍しくないことだが、今回は出だしが違うだけで、コラムの大半がほぼ同じ文章という、かなりビッグな使い回しだったのでビックリしてしまった。そりゃデジャブに襲われるわ。以下説明していく。
「姉さん女房万歳!」は、唐沢俊一が横山智佐の結婚式に参加した話から始まり、横山智佐が11歳年上の「姉さん女房」だということを挙げて、このように書いている。
ちょっと考えると、年上の女房というのは亭主を尻にしいて何にでも口を出すやかましい存在、といったイメージなのだが、調べてみると、才能を開花させた成功者には、姉さん女房持ちだった人物がやたら多いのである。
一方、「あいつはあいつは可愛い……」は、芸能人のカップルには「姉さん女房」が多いという話を挙げたあとで、次のように書かれている。
ちょっと考えると、年上の女房というのは亭主を尻にしいて何にでも口を出すやかましい存在、といったイメージだが、調べてみると、才能を開花させた成功者には、姉さん女房を持っていた人物がやたら多いのである。
「イメージなのだが」と「イメージだが」が違うだけでほぼ同一の文章であることは一目瞭然である。ちなみに、「あいつはあいつは可愛い……」の出だしはネットから古い情報をパクったおかげでおかしなことになっている(詳しくは「トンデモない一行知識の世界」を参照)。
この後、シェイクスピアとナポレオンとジョン・レノンの奥さんも年上だった話が出てくるが、ここは両者ともに完全に同じ文章である(240文字)。その後は若干違いがあるので比較してみよう。
まず先に書かれた「あいつはあいつは可愛い……」より。
……才能ある男性というのは、大体において世間のこととか、複雑な人間関係にうとく、子供っぽい。
次に「姉さん女房万歳!」より。
……天才肌男性(原文ママ)というのは、大体において世間のこととか、複雑な人間関係にうとく、子供っぽい。
「才能ある」と「天才肌」だけが違う。
「あいつはあいつは可愛い……」より。
その最も顕著なのがスポーツ界で、若・貴を輩出した二子山部屋は父親の故・二子山親方を三人が三人、年上の奥さんをもらっているし、野球界だとざっと思いつくままに挙げていっても、古田、イチロー、石井一、松坂、二岡、原監督、落合監督、それから坂東英二氏(原文ママ)など、姉さん女房オンパレードである。
「姉さん女房万歳!」より
その最も顕著なのがスポーツ界で、若乃花、貴乃花の兄弟、そして父親の二子山親方(貴ノ花)も、年上の奥さんをもらっているし、野球界だとざっと思いつくままに挙げていっても、古田、イチロー、石井一、松坂、二岡、原監督、落合監督、おなじみ野村監督、それから坂東英二氏(原文ママ)など、姉さん女房オンパレードである。
若貴に関する表現が若干違い、「姉さん女房万歳!」では新たに野村克也の名前が入っている以外は同じ。細かいことを書くと、父親の方の貴ノ花も一時期「貴乃花」と改名したことがあるので、「初代貴ノ花」と書いた方がいい。
「あいつはあいつは可愛い……」より。
私は、こういう現象は、人間が文化的動物だからだとずっと思ってきた。男性にとり、生殖が目的であれば、相手は若い女性の方がいいに決まっている。それを、あえて自分より年上の女性をめとるからには、シェイクスピアのような経済的理由、ナポレオンのように、自分のコンプレックスを気にしないでくれる(ナポレオンは自分の男性自身が子供なみの大きさであったことを生涯、気にしていた)という精神的理由、さらにはジョン・レノンのように、エキゾチズム好みという(後に浮気した秘書のメイ・パンもアジア人)文化的理由などが原因で、いずれにしても、動物とは一線を画するところだ、と思っていた。
「姉さん女房万歳!」より。
以前も他誌に書いたことなのだが、私は、こういう現象は、人間が文化的動物だからだとずっと思ってきた。あえて自分より年上の女性をめとるからには、シェイクスピアのような経済的理由、ナポレオンのように、自分のコンプレックスを気にしないでくれる(ナポレオンは自分の男性自身が子供なみの大きさであったことを生涯、気にしていた)という精神的理由、さらにはジョン・レノンのように、エキゾチズム好みという(後に浮気した秘書のメイ・パンもアジア人)文化的理由などが原因で、いずれにしても、動物とは一線を画するところだ、と思っていた。
「以前も他誌に書いたことなのだが」と書いてあるところを見ると、自分でも前にやったネタだとわかったうえで「別の雑誌だからいいだろう」と思ったのだろうね。実際は同じ雑誌で書いていたネタなんだけど。…っていうか、別の雑誌でもここまで使い回しちゃいけないよ。あと、姉さん女房だからコンプレックスを気にしないでくれるのか?とかエキゾチシズムと年上の女性を好むことの関係はあるのか?というのも気になる。…あ、唐沢は「エキゾチズム」って書いてるな。
この後、長谷川寿一・長谷川真理子『進化と人間行動』(東京大学出版会)から、ニホンザルやチンパンジーのオスが年上のメスを好むという話と、人間が若いメスを好むようになった話が紹介されているが、このくだりは完全に同じ。538文字、まったく同じである。
それからさらに109文字同じ文章が続いた後に、やっと違いが出てくる。「あいつはあいつは可愛い……」より。
医学的にかなり高齢出産のリスクが減少している現在、ある程度社会経験のある母親の方がずっと子供のためにも望ましい。
「姉さん女房万歳!」より。
医学的にかなり高齢出産のリスクが現象している現在、ある程度社会経験のある母親の方がずっと子供のためにも望ましい。
正しく表記されていたものをコピペすると何故か誤記されてしまったのだから謎すぎ。
最後に締めの部分を比較してみよう。まずは「あいつはあいつは可愛い……」より。
少子化が叫ばれて問題になっている現在、まだまだ生殖能力がある女性が若い、子ダネに元気のあるだろう男性をひっつかまえるというのは、実は日本のためにも望ましいのである。
次に「姉さん女房万歳!」より。
少子化が叫ばれて問題になっている現在、智佐さんのような、まだまだ魅力がある女性が若い男性をゲットするというのは、実は日本のためにも望ましいのである。日本のために智佐さん、おめでとう。
ははははは!
ここの書き換えには笑ってしまった。だって、
生殖能力→魅力
ひっつかまえる→ゲットする
だもの。おまけに「子ダネ」もカット。そのままあてはめると、横山智佐にあまりにも失礼だと唐沢俊一もさすがに気づいたんだろうね。…しかし、こうしてみると、オリジナルの文章って表現にかなり問題があったんだなあ。
…以上である。いやー、同じ雑誌のコラムでここまで使いまわすのかー。ビックリだ。唐沢俊一、いったい何を考えているんだろうなあ。自分でも使い回しだと気づいていたようだし。
しかし、今回の件は『フィギュア王』編集部にも大いに責任がある。だって、他の編集部はちゃんと使い回しに気づいているんだから。「裏モノ日記」2009年11月17日より。
単行本原稿は出来た分を送ってちょっと休み、次に今日が〆切の
メディアファクトリーの原稿。原稿用紙3枚程度のものなので
一気に書き上げ、メール。
それからまた単行本原稿にかかっていたら、メディアファクトリー
のSくんから電話。原稿のネタで以前同誌に同じ作品を扱ったもの
を載せており、カブるので差し替えを、ということ。
あちゃあ、うっかりしていたあ、と思い、今から原稿差し替えと
なるとネタ探しの時間がないなあ、と頭を抱えたが、ふと、
そうだ、こういうミスそのものをネタにすれば、と思いつき、
格好なネタがあったことを思い出す。すぐ書棚に飛んでいき
その本を探し出し、稽古場へ行くのを30分延ばしてもらって、
1時間強で一気に書き上げる。
急いでSくんにメール。
ちゃんとチェックをしておけば防げるミスなのだ。自分だって「見たことがある」と思ったのに、担当の編集者は気づかなかったのかなあ。しかも自分の雑誌に載っていた文章なのに。そもそも「あいつはあいつは可愛い……」と「姉さん女房万歳!」というタイトルだけを見ても同じテーマだってわかりそうなものだ。
それに、最近の『唐沢俊一のトンデモクロペディア』では「裏モノ日記」からの使い回しが目に付いていた(2009年11月25日、1月26日の記事を参照)。このことが今回の大規模な使い回しに無関係だとは言えないだろう。個人的には「ロバート・ケネディ大統領」以来のショックな出来事だ。
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