唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

スベっとるやん。

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 『フィギュア王』№144に掲載された『唐沢俊一のトンデモクロペディア』第57回「誠実なヒーロー」「裏モノ日記」1月3日成川哲夫の訃報を下敷にしている。今回の『トンデモクロペディア』全2075文字中、「裏モノ日記」から939文字がそのままコピペされている。『トンデモクロペディア』第55回でも同じように「裏モノ日記」からコピペしていたが(詳しくは2009年11月25日の記事を参照)、最近は省エネを心がけているのだろうか。地球にはやさしいけど「裏モノ日記」の読者にはきびしい。
 で、本文にもおかしいところがあるので指摘していく。

だが、やがてその幸せに凡人であるわれわれはすぐに慣れ、『悪魔くん』『キャプテン・ウルトラ』『ジャイアント・ロボ』など後続の作品も次々現れたことでぜいたくになり、毎週テレビで新怪獣が見られることを“当然のこと”ととらえるようになり、心にオゴリが見られるようになっていった。

 今だったらさしずめ「萌え系」のアニメが毎週観られるので「心にオゴリが見られるようになっていった」という感じかなあ。ヘンな発想だね。

 怪獣に変わってテレビを席巻したのは『巨人の星』を代表とする、スポ根ものであった。高度経済成長が終り、人々の価値観は、額に汗しての努力をよしとする風潮に傾きつつあった。もともと、高度経済成長を前提として、そのアンチテーゼとしての破壊を主眼としていた怪獣ものはしぼんでいかざるを得なくなった。

 日本の高度経済成長期は1955年から1973年までとされる。だから、『巨人の星』も高度経済成長期の作品に含まれる。…っていうか、スポ根ブームの時点で高度経済成長が終わっていたとしたら、『昭和ニッポン怪人伝』の内容を大幅に見直さなければならなくなるんだけど。なお、唐沢俊一は、怪獣ものが「高度経済成長のアンチテーゼ」であったという話を前にもしているので、2009年12月13日の記事を参照。個人的には「第一次怪獣ブーム」を体験している人間を特権化する考えでしかないと思うのだが。

われわれはまた、怪獣と出会える機会を春休み、夏休みの怪獣映画のみに限定されてしまったが、69年の怪獣映画は、大映ガメラが『ガメラ対大悪獣ギロン』、東宝ゴジラが『ゴジラ・ミニラ・ガバラオール怪獣大進撃』と、共に後には評価が高くなったが、その時点では、それまでの両シリーズに比して、街の破壊シーンがなかったり、スケール縮小の感は否めないものだった。

 『オール怪獣大進撃』は1969年12月公開。第1回東宝チャンピオンまつりで上映された。

世間はその間に公害など社会問題がはびこり、ニクソンショックによる景気の混乱などを経て、大きく転換してた(原文ママ)。われわれは、今こそ新たな枠組みによる怪獣ものを意識下で切望していた。

 ニクソンショックが起こったのは1971年8月(7月の訪中表明を含む場合もある)。『スペクトルマン』が放映開始された後のことである。…毎度のことながら、イギリスとアメリカ大統領がからむと大惨事が起こるね。「社会問題がはびこり」というのもどうかと思うが。
 あと、「われわれは、今こそ新たな枠組みによる怪獣ものを意識下で切望していた」というのはよくわからない。怪獣ファンは別にマンネリを嫌っていたわけでもないんだし。「意識下」と付け加えているのは「気づいていないだけで本当は望んでいたんだ」とか言い訳されそうでなんだか嫌だ。

 にも関わらず、スペクトルマンがこちらの心をとらえたのは、公害や人間の心の闇といったテーマをかなりシビアに取り入れて描いた70年代チックなストーリィと、主役・蒲生譲二(ジョージ・ガモフのもじり、と言うのが何とも)を演じた成川哲夫の、不器用だが誠実な人柄がにじみ出た演技によるものだった。誠実でなければつとまるまい。なにしろスペクトルマンはヒーローでありながら、惑星ネビュラ71の変身指令がなくては変身できないという、公務員ヒーローだったのだ。

 「公務員ヒーロー」というのがよくわからない。刑事ドラマの主人公はみんな公務員だしなあ。あと、「人工遊星ネビュラ71」な。オープニングのテロップだと「ネヴィラ」になってるけど。

第15話から16話にかけての地震怪獣モグネチュードンの回のラスト、惑星ネビュラは、今回の事件の記憶は地球人の心に残すべきではない、と言って時間を戻し、事件そのものをなかったことにしてしまう(そんなことが出来るのなら、ゴリが宇宙刑務所を脱出する前に時間を戻せばいいのに)。しかし、その処置に満足できない蒲生は一人街に出て、人々に
「東京大地震は来ると思いますか? あなたは、今大地震が来たらどうしますか?」
と質問して回る。たぶんアドリブでやっているそのインタビューシーンがストップモーションになって番組は終るのだが、その表情の真剣さが、役柄を超えて印象的だった。

 まず、ネビュラ遊星が時間を戻したのは、地震が天災ではなくゴリが引き起こしたものだったからである。蒲生は「それでも地震の記憶は残しておくべきだ」と言って、街(おそらく新宿駅西口)に飛び出し人々にインタビューするのである。ちなみに、この回はストップモーションで終わっていない。
 それから、ゴリは惑星Eを支配しようとして失敗し、精神改造刑を言い渡されたところをラーに救われたので「宇宙刑務所」から脱出したわけではない。

結局、男の子に恵まれたものの、彼は高校生で早世してしまい、成川の人生に一抹の影を落とすことになったのは残念である。

 成川哲夫が会長をつとめていた空手団体「成道会」のサイトを見ると、指導員に「成川朋芽」という人がいる。もしや、と思ってさらに見てみると更新履歴の「平成18年2月2日」にこのような文章がある。

成川朋芽先生と女優で朋芽先生のお母様である関口昭子さんも出演します。

 関口昭子は元女優で成川哲夫夫人なので、成川朋芽さんが成川哲夫のお嬢さんであることは間違いないだろう。娘が自分と同じく空手と演技をやっていたのだから成川哲夫は幸せだったのではないか?と思うのだけど。それにしても、「ご挨拶」のところにある成川哲夫の写真はとてもいい。蒲生譲二はずっとカッコよかったんだなあ。
 

 『裏モノ日記』からのコピペ、書いてあることが適当、そしてニクソンショック…。一体どこまで劣化していくのだろうか。まあ、俺はネビュラ遊星から独特の声で指令を受けているので、引き続き検証をやっていきますけどね。


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