大鳥居バーン。
PVカッコいいなあ。
『ラジオライフ』3月号に掲載されている『唐沢俊一のトンデモ都市伝説探偵団』第3回は「羽田空港の神社の秘密」である。以下、カラサワ探偵長の発言は赤字、少年探偵すばるの発言は青字で表記する。
(前略)実はですね、探偵長。飛行機が空を飛んでるってこと自体、都市伝説なんだそうです! 理屈から言えばあんな大きな重いものが、飛ぶわけがないんだけど、なぜか飛んでるっていうだけなんだって。みんな、ずっと騙されていたんですよ!
おいおい、そんなこといって、飛行機は実際に飛んでいる。お前だってこないだ、飛行機乗って愛媛まで行ってきただろう。あれも幻か?
…あ、そういえば
この噂は竹内薫氏の『99.9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』という本からネットに広まったらしい。実際には飛行機が飛ぶ揚力理論というのはムチャクチャ複雑で、分かりやすく説明するのが困難だ。それで“実際は何で飛ぶのか分かっていない”という伝説が生まれたのだ、と思うがな
なるほど。そういうことですか。で、探偵長はその理論が理解できるんですか?
それはその、ムニャムニャ
「飛行機はなぜ飛ぶのか?」については簡単に説明できる(たとえば日本飛行機ホームページを参照)。ただ、それは原理の大まかな説明であって、厳密に説明しようとすると多少ややこしくなるという話である。また、竹内の本が出る5年前に既にデヴィッド・アンダーソンが従来の理論に異議を唱えていることも考慮すべきだろう。文系の自分でも一応理解できたので「ムチャクチャ複雑」というほどでもないように思うのだが。『ラジオライフ』の読者は理系が多そうだし。
次に羽田空港のある「羽田」という地名の由来について取り上げられている。
地名辞典で調べてみると。“埴田”(はにだ)がなまったもの、という説をとっているものもあるな。埴は埴輪の埴で、土という意味だ。あそこらへんは隅田川と多摩川が海に流れ込む河口だからな。堆積土が積もって土器作りに適した土が産出したんだろう
羽田沖は多摩川の河口に近いけど、隅田川の河口からは離れているのでは。
次は穴守稲荷についての説明。
うん、今でこそ空の便の方が有名だが、江戸から明治時代にかけて、この辺りは海岸沿いに続いた漁師町だった。で、漁師町だから船の安全を守ってくれる神社が必要だったのだよ。ほら、船には穴が大敵だから、その穴が空かないように守ってくれるのが穴守神社、だ
穴守稲荷公式サイトより。
社伝に云う。文化元年の頃(西暦1804年頃)鈴木新田(現在の空港内)開墾の際、沿岸の堤防しばしば激浪のために害を被りたり。或時堤防の腹部に大穴を生じ、これより海水侵入せんとす。ここにおいて村民等相計り堤上に一祠を勧請し、祀る処稲荷大神を以てす。これ実に当社の草創なり。爾来神霊の御加護あらたかにして風浪の害なく五穀豊穣す。その穴守を称するは「風浪が作りし穴の害より田畑を守り給う稲荷大神」という心なり。そもそも稲荷大神は、畏くも伊勢の外宮に斎き祀られる豊受姫命にましまして、衣食住の三要を守り給える最も尊き大神なり。吾等一日たりともこの大神の恩顧を蒙らぬ日はなく、実に神徳広大なり。
つまり、「穴守稲荷」は堤防に穴があかないように守っているわけだ。唐沢俊一はこのコラムを書くに当たって羽田まで取材に行っているけど、穴守稲荷には行っていない。…とりあえず、コラムで取り上げる場所には行っておこうよ。
そして、穴守稲荷の大鳥居の話になる。この大鳥居については次のような言い伝えがある。もう一度穴守稲荷公式サイトより。
戦前は今の羽田空港内の位置に鎮座していた。しかし、終戦を迎え、近隣地区の住民たちが強制退去されたのと同時に現在地へと移転。だが穴守稲荷神社の大鳥居だけは撤去されず、長らく旅客ターミナルビル前面に残されていた。何度か取り壊しや移転案も出たのだが、その度に工事関係者の事故が相次ぎ、祟りを恐れてか撤去出来ずにいたのである。その鳥居も1999年の羽田空港新滑走路整備時、ついに多摩川と海老取川の河口に移された。徒歩で行ける羽田空港の最端の場所で、大鳥居は今でも近隣一帯を見守っている。
これはわりと有名な話らしい。で、カラサワ探偵長は大鳥居についてこのように説明している。
少なくとも平成2年の移転(空港内の天空橋付近)の時に怪談じみた話はなかった、とオカルトライターの山口敏太郎氏はいっているな。そもそも、昭和20年の時は穴守稲荷の御神体も移転されているわけで、何で鳥居だけが祟るのか、理屈に合わない。実際のところ、この大鳥居が駐車場の真ん中に残されたのは赤くて大きいので、着陸する米軍機の格好の目印になったためらしいが…
上の穴守稲荷公式サイトの説明と比べてほしいが、大鳥居が移転した年が間違っている。唐沢俊一も謹賀新年のあいさつでは正しく書いていたのに。
写真は旧臘29日に羽田で撮った大鳥居。
羽田の鳥居はもともと穴守稲荷の鳥居でしたが、
昭和20年、進駐軍の羽田接収の折にこの鳥居だけが
駐車場の中に残され、平成11年、現在の場所に移転
されました。鳥居の奥には普通、神社があるのですが
ここはその先が空と海だけ、というのが何とも。
とはいえ、何か鳥居越しに見ると空と海の青さが
神々しく見えたことでした。
新年のみなさまの飛躍を祈り。
なのに何故間違えるのか。
それに、大鳥居が米軍機の目印になっていたために移転されなかったとしたら、1958年に羽田空港が米軍から返還された後も長いこと放置されていたのは何故なのかわからない。
続いて、カラサワ探偵長の「古来、河口には人の魂が集まるといわれている」という発言を受けての唐沢俊一の地の文章。…探偵長とすばるの掛け合いに地の文章を混ぜるのはリズムがおかしくなるからやめた方がいいと思うんだけど。
関東大震災、東京大空襲などで、多くの被害者は死体となって川へ浮かび、この羽田沖へと流れ着いた。羽田は死者の行き着く場所でもあったのだ。現在でも、羽田の沖合には夜になると奇妙な赤い火が燃えたり、海上を歩く大勢の人の姿が目撃されたりするという。1982年の日航機羽田沖事故の際、心身症になったという機長は、着陸体制(原文ママ)に入った直後、“去ね、去ね(いね、いね)”という声が聞こえて意識を失い、あの大惨事となったという…。
「沖へと流れ着いた」というのがヘンだな。流れ着くのは陸地なのであって。「行き着く」も同様。
また、羽田の沖合いで火の玉や幽霊が目撃された話はあるらしい(東京幽霊名所を参照)。だが、この火の玉や幽霊は羽田沖に墜落した飛行機の犠牲者と関連づけられている。そもそも、「古来、河口には人の魂が集まるといわれている」というのが本当なのかどうか。あと、カラサワ探偵長によると「羽田沖事故の後」「カニが豊漁になったという噂もある」らしいですよ。…どうも「と学会」運営委員にしてはオカルト寄りだ。
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