バカとアニドウとちゃーがんじゅう。
「ちゃーがんじゅう」はウチナーグチ(沖縄の方言)で「いつまでも健康」という意味。唐沢俊一にはいつまでも健康でいてほしいという願いが込められたタイトルである。…なーんてね、フフ(岡本夢路)。
唐沢俊一が「裏モノ日記」12月15日で、あぁルナティックシアターの座長である橋沢進一にかなり長文のお祝いの言葉を書いている。「うちの劇団」についての言い訳があるのが笑える。しかし、
その恩義だけでも、私は彼を何とか、金のとれる役者にしなければ、
その手助けをしなければと思っている。本人は酔って
「まあ、それァ出来れば、でいいですよ、楽しく飲めさえすれば」
と言うのだが、私は本気だ。そのために、これだけ長いつきあいになったのだ、今後は言わせて
もらいたいことも出来るだけ言わせてもらおう。
というのは少し危険な感じがする。おぐりゆかの件は記憶に新しいところだし、それに伊藤剛さんのこともプロデュースしようとしていたらしいし。唐沢本人がプロデュースを好きとか自分にプロデュースの才能があると思い込むのは自由だが、客観的に見てみると、唐沢がプロデュースに乗り出すと人間関係が壊れる、というのが今までのパターンのようだから。どんなプロデューサーなんだ。
では本題。アニドウの同人誌『FILM1/24』第32号(1984年7月発行)に、唐沢俊一が寄稿していた。唐沢は『アニメのいろいろについて』『命名考』という署名入り記事と、投稿欄で『アニメ百馬鹿』という文章を書いているが、今回は『アニメ百馬鹿』を紹介する。『アニメ百馬鹿』というのは要するにアニメファンの「あるあるネタ」なのだと思う。まあ、25年も前のことなのでいまいちピンと来ないのだが(自分はまだ小学生だった)。そこのところは当時を知る方にお教えしていただきたいところだが、早速紹介しよう。
■アニメ百馬鹿
●いまだに「西崎さんは悪い人じゃないよ」と信じているバカ。
●「ガンダムの良さはストーリーにあるのよ」といいながら美形キャラのセルを下敷にはさんだりしているバカ。
●TVの放映を全部ビデオにとっておきながらツギハギの映画を見に行くバカ。
●それで再度感激するバカ。
●悪口をいいながらちゃんとTVも映画も見ているバカ。
●すぐパロディーをつくるバカ。
●主人公をオカマっぽくしたりズッコケさせたりするだけでパロディーでございと称するバカ。
●そういうのを集めて雑誌で特集するバカ。
●雑誌のインタビューでは「どこがウケるんだかわからない」といいながら映画の広告に「全てをかけて悔いない作品だ」とヌケヌケと言うバカ。
●メカが出りゃ喜ぶバカ。
●キャラクター商品を全部集めるバカ。
●会ったこともないアニメ関係の人間をさんづけでよぶバカ。
●美形キャラをセルや設定書からオコシてヌードにしてヨロコンでるバカ。
●声優とキャラクターを混同するバカ。
●それでいい気になってレコードなど出すバカ。
●いい年をして「クラリスちゃん可愛い!」などと喚くバカ。
●あまつさえファンジンなどつくるバカ。
●演出にキャラを走り回らせ、ジャンプさせ、高いところによじのぼらせるしか能のないバカ。
●それもできぬ凡百のバカ。演出家
●映画館の中で他人の迷惑も考えずにガチャガチャ写真を撮ったり録音したりするバカ。
●「よしっ!」と叫ぶバカ。(かなりうるさい)
●映画館の前に並んでいると「あなたもアニメ、お好きですか」と誰彼かまわず話しかけてくるバカ。(並びながらアニメの本などこれみよがしに読んでいるバカ)
●「コレはは(原文ママ)僕の考えたヤマトの改造案なんですが、今のヤマトでは下からの攻撃に弱いから…」などと話し込んでるバカ。
●脈絡なくファンになるバカ。(「わたしガンダムと新巨人の星とナーザの大あばれのアニメが好き!」)
●映画の主題歌をニューミュージックの歌手に歌わせるバカ。
●上映会でいっぺんうけると、同じ作品を何度もやるバカ。
●パートの主婦でもできる彩色の仕事を、「アニメブームの底辺をささえているのはおれたちだ」などと誇りに思っているバカ。
●「製作者の人達は本当にアニメを愛しているんだ」と思っているバカ。
●自分のアニメがいかに評価されたかトクトクと自慢するバカ。
●それほどでもない作品なのに「完全なものをお見せしたい」と言って誌写会(原文ママ)を日延べするバカ。
●それで怒らないバカなファン共。
●何かというと「シリー・シンフォニーの頃のディズニーは・・・」とか「初期のフライシャー作品は・・・」とかいって、若いファンをしらけさせるシルバーシート馬鹿。
●上映会で「フライシャーの作品も案外面白いわね。ユーモア味があって・・・」などとオソロシイことをいうテレビ世代バカ。
●ガキをおしのけて東映まんが祭りに席をとるバカ。
●ヤマトを見て将来アニメーターになろうと決心するバカ。
●ブームとみるとすぐ専門誌を出す出版社バカ。
●それにラチもない批評など書いてメシをくっているダニ評論家バカ。
●もうアニメブームは終わった終わったといってたらまだ続きそうなのであわてているバカ。
《おまけ》
●いちいちブームに文句つけるバカ。●そんなのの書いた文章を読んで怒るバカ。
――――――オソマツ(今度はSF編を作ろかな)
さすがは「早すぎた荒らし」。触るものみな傷つけている。1984年に2ちゃんがあれば…。
…で、ぶっちゃけた話、これって面白い? まあ、いくつかは今でも使えるかなー、と思うけど、ただの悪口にすぎないものも多い。「ダニ評論家バカ」って…。「試写会にキャラクターの扮装してくるバカ」というのは岡田斗司夫も昔そういうイベントをしてなかったっけ? 「試写会を日延べするバカ」というのは手塚治虫のことかなあ。たぶん、モトネタになっている人がもっといるんだろうなあ。たしかに、『ビックリハウス』のネタを今読んでも面白いか?というと疑問なのだが、『アニメ百馬鹿』は当時から面白かったのかどうか。
自分は昔ハガキ職人だったので、『アニメ百馬鹿』が面白くない理由はなんとなくわかる。ひとことで言えば「ユーモアがない」のだ。だって、『アニメ百馬鹿』で挙げられている「バカ」の中で唐沢があてはまるのは「「よしっ!」と叫ぶバカ」「いちいちブームに文句つけるバカ」くらいのもので、あとはひたすら他人の「痛い」行動を嘲笑しているだけなのだ。ネタをやるときには自分を突き放して考える必要があるのに、唐沢はそれができていない。もしかすると「悪口」と「ユーモア」の区別がついてないのかもなあ(唐沢に限らずそういう人はわりとよくいる)。あと、ネタにされているアニメファンの行動も「ウスい」ような気がする。「そんなやつ本当にいるの?」とビックリさせられるようなものがないことから、唐沢がどの程度のファンだったかもなんとなく察しがつく。「濃い」人とつきあっていたら自然とネタも濃くなるはずだからね。
唐沢俊一やオタク史の検証とは別に「世間全体におけるユーモアの変化」というのも調べてみたいような気もするが、やっぱりインターネットの存在はデカいんだろうなあ。世の中にはセンスのある人が本当にたくさんいる。
さて、『アニメ百馬鹿』を読み終わって投稿者の名前をチラッと見て心の底から驚いてしまった。何故なら、
「世田谷区・唐沢俊一」
とあるのだ。
…え、ええ〜っ。1984年7月に世田谷にいたということは、あなた、東北薬科大学にはいつ行ってたの? 母さん全然わかんないわよ! まあ、『ファンロード』に投稿したことはないんだけど、唐沢俊一の80年代はあまりに謎すぎる。
というわけで、『アニメ百馬鹿』の中で一番優秀だったネタは「世田谷区・唐沢俊一」に決定しました! お葉書を寄せていただいた唐沢さんには賞品として当ブログ特製ノベルティグッズ『唐沢俊一検証本VOL.2』と『トンデモない「昭和ニッポン怪人伝」の世界』を冬コミで手渡しさせていただきます。おめでとうございまーす!
『FILM1/24』に載った2つの署名入り記事については後日紹介します。これもなかなか凄い…。
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