唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

現代落語の落伍者たち。

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 このエントリーを書いているのは12月9日の夕方なのだが、この段階で既に唐沢俊一「裏モノ日記」12月9日分を書き終えている。

立ち稽古9時半まで。

とか

12時半、帰宅。

とあるけど、未来日記か?


 唐沢俊一が『今おもしろい落語家ベスト50』(文藝春秋)というムックのアンケートに回答している。唐沢本人による解説

文春ムックから発売中。
アンケートに答えていますが……私が一番長く、かつ
過激なことを言ってるなあ。
また敵を作ったか(笑)。

とはいえ、言うべき事は言った感覚もあります。
賛同するにせよ反発するにせよ、まずお読みを!

 では、実際のコメントを見てみよう。P.43より。

落語は失われた江戸文化へのノスタルジーを基盤にして形成されてきたジャンルだと思います。昭和四十年代まではまだ、そのノスタルジーを日本人が共有できました。しかし現在はもはや完全にその文化継承が絶えたとみていい。存在基盤自体を変化させていかなければ、落語は絶対にあと二十年を生き延びていけません。根本改革が必要なのは政治ばかりでない、伝統文化もまたしかり。中でも笑いという、最もラジカルなものを武器にしている落語に、真っ先かけての改革が求められます。昔の名跡を復活させて喜んでいるようでは先は暗いと思わざるを得ません。

 一言で言えば「野暮」。他の人は贔屓の落語家の素晴らしさについて実に楽しそうにコメントしているのに、どうしてこの人は…。それに唐沢と同じようなことを高信太郎もコメントしているが、ずっと簡潔でわかりやすい(論旨に賛同するかはともかく)。P.45より。

円丈師匠の『ろんだいえん』がすべて正しい。「落語には<今>が必要。<今>のない古典は消えていく」です。歌舞伎をイヤホンの説明を聞きながら見て、落語はこうなってはいけないとつくづく思いました。

 
 それに、唐沢の見方は別に「過激」でもなさそうだ。広瀬和生はムックの中で次のように書いている。P.114、115より。

 一九九〇年代は、その歪みが頂点に達した時代であり、創意工夫の無い退屈な落語を「本寸法」という言葉を用いて礼賛するマニアの存在が、一般人から落語を乖離する方向で作用していた。

 だが、二十一世紀に入って間もなく、落語界で「本寸法から自分の言葉へ」というパラダイム・シフトが起こった。「自分の言葉で落語を語る」という当たり前の前提が、落語界全体に戻ってきたのである。今の落語界には、「自分の言葉で語る」新たな世代の才能ある落語家が何人も存在し、個々に支持基盤を擁立している。それらの集積が、即ち総体としての「落語界の隆盛」なのだ。

 広瀬の分析が正しいとすれば、唐沢の見方は「過激」どころか「一周遅れ」だろう。得意がるほどのものなのか。だいたい、唐沢の見方に拠ると、近年の「落語ブーム」がどうして起きたのか説明できない。昔の名跡が復活したからブームが起きたわけではないと思うのだが。あと、特撮やアニメが「存在基盤を変化」させることには批判的だったのに、どうして落語ならそれがアリになるのだろうか。もしかすると、ウスいから具体性の無い「過激」な意見に走らざるを得なかったのかなあ、と思う。ついでに「ガンダム論争」のことを思い出したり。

ブームというのは人間をメクラ(原文ママ)にするものです。ここ数年のブームにのっかって、SFファン、アニメファン(プロ作家たちまでも)少しハシャギすぎているのではありませんか。現在まで自分たちが歩んできた道ははたして正しかったのか、見通してみる勇気も必要なのではありませんか。

 少し前にNHKの番組でSFブームを取りあげたとき、ゲストとして出てきた石川喬司氏は「クローン人間というの知ってますか」などと大ハシャギしていらっしゃいましたが、わきで「ホウ」などと感心したような声をさしていたNHKのアナウンサーのその目は、サルまわしのサルを見る目つきでありました。SFファンの皆さん、SF作家の皆さん、そろそろ世間があなた方にまき返しをくわしてきますよ。常識的な世間ほどコワイものはないのですよ。今のままでハシャイでいて本当にいいんですか?どう思いますか、皆様、本当に。

「荒らし」体質は変わってないのかも。

 ちなみに、唐沢が評価している落語家は、

1位:立川談笑 
2位:三遊亭白鳥
3位:立川談之助

である。

少なくとも“現代において落語を語る”と言う(原文ママ)行為の根源に疑念を抱いて、チャレンジを繰り返している。

という理由で評価しているとのこと。…でも、どうせなら、自分の名前を挙げてみれば面白かったのになあ。唐沢が高座に上がるのもある意味「チャレンジ」だもの。その模様はこちらで!

現代思想の遭難者たち 増補版

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