唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

昭和てすら・こいる。

「この前世界システムを完成させましてね」
「へえへえへえへえそうかそうかそうかあーよかったよかったよかった」


 『フィギュア王』№92に掲載された『唐沢俊一のトンデモクロペディア』第6回「科学と興業」より。


 このコラムの冒頭では、「世界的なサーカス王」カール・ハーゲンベックについて触れられている。ハーゲンベックが少年時代に子鹿にペンキを塗ってこれをラバだと触れ回って客を呼んだり、「正真正銘、ただの馬」という看板を出して本当に普通の馬しか見せなかった、ということを紹介したうえでこのように書いている。

今の広告も、基本はこれと同じことをやっている。

 …いや、JAROが黙っていないと思うけど。

 で、ハーゲンベック同様に「サギ的興業の魅力に取り憑かれてしまった」人物としてニコラ・テスラの名前を挙げている。しかし、この後、ちょっとした怪奇現象が起こる。

それは、晩年のテスラが、先に挙げたエイブラムズのようなあやしげな発明品の公開実験という興業に血道をあげ、山師という印象を持たれて死んだためである。

 この文章のどこが怪奇現象なのか? 実は「エイブラムズ」なる人物はここで初めて出てきたのだ。「先に挙げた」と書かれているのでビックリして探したものの見当たらない。一体どういうことなのか。編集者もちゃんとチェックしたのか。…というか、ずっと気になっているのだが、「興業」ではなく「興行」ではないのだろうか。「見世物興業」と何度も書いているし、そもそもサブタイトルからして間違っていることになる。

 テスラの行った実験のうち最大のものは、1899年、標高2000メートルのコロラド・スプリングスの街で行われた“世界システム”なる発明の実験である。異様な形をした研究施設が田舎町コロラド・スプリングスに建造された、高さ60メートルの電極塔がその施設からは天にそびえ立ち、その先端には光り輝く金属球がついていた。マンガなどでおなじみの光景の元祖、いや、モデルが、このテスラの世界システム研究所だったのだ。研究所内部では、これまたマンガの通りに巨大なコイルやコンデンサが無数に配線されていた。ここで研究されていた“世界システム”とは情報とエネルギーを、世界中に無線で送るという壮大な計画であった。これを使えば空中を飛ぶ飛行機に無線でエネルギーを補給でき、永遠にその飛行機は着陸することなく飛行を続けられるのである。しかし、莫大な資金をつぎ込み、食いつぶした挙げ句、この実験は中断された。

 上の文章は「ベネディクト 地球歴史館」の文章を下敷きにしたものである。

1899年、標高2000mにある町コロラドスプリングズで、ニコラ テスラをマッド サイエンティストならしめた歴史的実験が始まった。実験が行われたワーデンクリフ研究所の中央には、高さ60mのポールがそびえ立ち、先端には不気味な金属球が輝いていた。どう見ても、B級SF映画の大道具だ。研究所の中では、異様さはさらに拍車をかけた。巨大なコイル、コンデンサ、無数の配線が血管のように張り巡らされている。むろん、テスラの十八番『テスラ コイル』もある。まさに、マニアが泣いて喜ぶマッド サイエンティストの世界だった。

 ここで、テスラが目指したのは『世界システム』とよばれる装置だった。情報とエネルギーを無線で世界中に送るという地球スケールの超技術である。もちろん、このシステムで、テスラ コイルは大活躍するはずであった。ところが、この壮大な実験は、莫大な資金を食いつぶしたあげく、とん挫する。つまり、失敗したのである。

 なお、「ワーデンクリフ」というのはテスラがコロラドスプリングズで実験を行った後に移り住んだロングアイランドの土地のことなので「ベネディクト」の記述は誤っている。唐沢はパクらなくて正解。
 上の文章がアップされたのが2005年9月4日、唐沢が『フィギュア王』№92の原稿を書いたのが2005年9月7日。わりとギリギリだ。

さてそれから、というので今度はフィギュア王原稿6枚、アリモノ資料で前半はまとめるが後半は書き下ろしでずだだだと。これも1時間で書き上げて編集部に送付。

ハーゲンベックについては手持ちの資料で書いて、テスラについては「ベネディクト」を参考にしたということなのだろう。

テスラが出資者を集めて開発したと称するものの中には、人工地震兵器、殺人光線、気象兵器、反重力装置など、今日でもSF映画の中にその姿を現すマッド・サイエンティックな発明がいっぱいである。

「ベネディクト」

さらにテスラが関わったとされる装置を列挙すると、人工地震兵器、殺人光線、気象兵器、反重力装置。かくして、テスラは歴史上最大のマッド サイエンティストに祭り上げられたのである。

 列挙されたものが順序まで同じ。あと、「サイエンティック」じゃなくて「サイエンティフィック」(scientific)。

あの有名な、テレポーテーション実験と言われるフィラディルフィア・エクスペリメント(原文ママ)にもテスラは参画していた。

 「フィラデルフィア・エクスペリメント」については『トンデモ超常現象99の真相』(洋泉社文庫)で皆神龍太郎が「テレポーション実験」などではなく「船体の磁場を取り除く消磁実験」だったと説明している。いやあ、こういう時は「と学会」は頼りになるなあ。唐沢俊一にも説明しておいてください。

テスラが本気でこれらの実現性を信じていたのかどうかは疑わしい。晩年の彼は、自らの天才科学者というイメージを利用して、時折そのような奇想天外な発明を完成させたと称してはマスコミを集め、出資者を募って生活費にしていたケが濃厚にある。つまりはサギ師、いや、美しく言えばハーゲンベックと同じ、好奇心で人を釣る興行師だったわけだ。

 既に引用した文章でも唐沢はテスラが「山師」だと思われていた、とも書いているが、しかしこれは「ベネディクト」や「ベネディクト」が参考文献として挙げている新戸雅章『超人ニコラ・テスラ』(筑摩書房)の見方とは大きく異なっている。…新戸さんは『新・UFO入門』で唐沢にパクられた人ですね。
 『超人ニコラ・テスラ』では優れた科学者であったテスラが「マッド・サイエンティスト」と誤解されたために不当に低い評価をされていたと書いていて、「ベネディクト」でもそれはちゃんと説明されている。また、テスラは交流発電機などを発明し、磁束密度の単位に「テスラ」として名を残していることからも功績は十分に認められている。そして、テスラの故郷であるセルビアの100ディナール紙幣には彼の肖像画が描かれている。だから、テスラを「サギ師」「山師」とする唐沢と「マンガ家にでもなってればよかったのにねニコラ・テスラとイラストで描いているソルボンヌK子の2人はテスラを貶めているのだ。いつも通り結論ありきで書いているんだろうけどね。一体どっちが「サギ師」「山師」なんだろう。余談だが、クリストファー・ノーランの『プレステージ』ではデヴィッド・ボウイニコラ・テスラを演じている。詳しいことは書けないけど、ビックリしたなあ、『プレステージ』(綾辻行人が絶賛していた)。


 コラムの中で「エイブラムズ」のテレポーテーション実験をやってしまうなんて、唐沢もなかなかのマッド・サイエンティストだな。


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カッコいい。

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