唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

クビシメロマンチスト。

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 今回は『フィギュア王』№141に掲載されている『唐沢俊一のトンデモクロペディア』第54回酒井法子はマゾ?」を取り上げる。…凄いタイトル。

 これ(引用者註 酒井法子の事件)が詐欺とか殺人とかという話題なら、通り一ぺんの興味になってしまう。ドラッグという、自分の肉体と精神をボロボロにすることがわかりきっているものに、あえて手を出すという行為の“謎”に、みんな不可思議な好奇心を持ったのではないだろうか。

 いや、薬物使用でなく殺人だったらもっと大騒ぎになっていたと思うけど。それに小室哲哉の詐欺事件がつい最近大きく報じられたのを忘れてしまったのだろうか。

 文化人類学者の栗本慎一郎は、最近は誰も評価しないようだが、二十年ほど前まではマスコミ文化人としてテレビなどにひっぱりだこだった。彼がその主要著作で論じていたのは“人間は快感で進化した”という理論である。人間の大脳は、他の動物に比べ、快感を感じる神経が突出している。要するに「チョー気持ちいい」という感じに中毒するあまり、人間はどんどんいろんなシステムを作ったり、芸術を作り上げたり、財産を貯めたり、それを一気に無駄遣いしてみたり、さらには萌えキャラの抱きまくらを買ってみたりするのである。

 「主要著作」というのはおそらく『パンツをはいたサル』のことなのだろうが、どうもまとめ方が雑。システムを作ることに快感をおぼえているかのような書き方だ(「マインドウイルスと共生する。」を参照)。あと、「無駄遣い」というのは「ポトラッチ」のことなのだろうが、抱き枕を買うことも「無駄遣い」に含まれるのでわざわざ書く必要は無いだろう。

 酒井法子はミュージシャンであり、夫の高相なにがしはサーファー(プロではないにしろ)である。満場の観客の喝采を受けたり、大波を見事にサーフしきったときなど、脳内にあふれんばかりの快楽物質(脳内麻薬)が分泌されていたであろう。彼ら夫妻は、マスコミが言うように覚醒剤に中毒していたのではない。その、脳内麻薬に中毒していただけであり、どちらも現役を引退して、そういう脳内で快楽物質を分泌できるような場から離れ、あの快感よもう一度、と、似たような快感を人工的に作り出す違法ドラッグに手を出しただけなのである。

 酒井法子は現役を引退していたっけ? 逮捕の1ヶ月前に撮影されたインタビューでの様子がおかしかったことはしばしば報じられているから、引退していたわけではないだろう。それに覚醒剤を数年前から使用していたとのことだから、唐沢の説は成り立たないのではないだろうか。なお、高相祐一公判で薬物を使用した理由について「ストレス解消のため」と述べている。

これは彼女らばかりではない。あのマイケル・ジャクソンも同じだろう。

 マイケル・ジャクソン鎮痛剤を常用していたらしいけど、覚醒剤は使っていないんじゃないかなあ。「薬局通」なんだから薬の区別はつけてほしい。

 なんで脳内にそんな快感を感じさせるような物質が分泌され、さらにはそれを受容する神経末節があるのか。それは、人間が自分の体に加えられる苦痛を緩和する為である。柔道で言う“締め技”というのがある。首のところの血管を締めて、脳に酸素がいかないようにする。脳はこの酸素不足の苦痛を和らげるために麻薬様物質を分泌させる。
 すると、幸福感がドワッと涌いてきて、次に御花畑の中を飛び跳ねているような幻視が症状として現れる。まさにその快感は、底なしの快楽の穴の中に“落ちる”ようだという。

 柔道での「落ちる」と呼ばれる状態が気持ちいいという話はよくあるものだ(それを否定する意見もある)。しかし、その気持ちよさが脳内麻薬のせいなのかというと疑問がある。何故かというと、瞬間的に「落ちる」ことがあるからだ。自分は「落ちた」ことはないけど(失神したことはある)、総合格闘技の試合でもチョークをかけられた選手があっという間に失神するのを何度か見た覚えがあるのだ。それこそ脳内麻薬が分泌する時間も幻視する時間もなかったと思われる。…あ、でも、小林まこと『柔道部物語』に出てきた銚子という選手は締め落とされるたびに臨死体験していたな(ギャグなんだろうけど)。ちなみに、「モニョモニョモニョ」にあった実際に「落ちた」ときの体験談。

練習中に初めて落ちた・・・!

立ちくらみで失神した時とまったく同じ現象だった。人生で落ちたのは4度目。

梅村さんのフロントチョークの受け役をやってたら、タップする間もなく、フワ〜ンと黄色いモヤのかかった感じになって、目の前に梅村さんじゃない誰かがいて、気がついたら立ちくらみのヒドい感じになってた。

これが落ちるってやつか・・・。

 読む限りではあまり気持ちのいいものではなさそうだ。
 さらに、実際に「落ちる」瞬間の動画。

 やっぱり気持ちよくなさそう。

 アメリカでは、この、自分の首を絞めるアベサダ遊びが子供の間で流行っているそうで、1995年から2007年までの間に判明しただけで、82人の子供が死亡しているという。05年には22人、06年には35人と急増しており、しかもこの遊びが恐ろしいところは、死者の平均年齢が6〜19歳と少年少女ばかりであるところであり、特に11〜16歳の世代に集中しており、その平均年齢は13歳。いずれも、まだ小遣いではドラッグを買えない世代が、ドラッグの代用に快感を得る方法はないかと試行錯誤して、その結果この方法を発見したのだろう(真似するような馬鹿なことは絶対しないように。プロでない限り、首の血管をうまく締めることなど出来ない。たぶん、ほとんどの被害者が実際に快感を感じる暇もなく、脊椎を傷め器官を傷め、苦痛の中で死んでいった筈だ)。
 アメリカの親たちは、自分の子供の首に指やロープの後(原文ママ)がないかどうか、目が充血していないかどうかを毎朝注意しているという。

 まず、いきなり「アベサダ遊び」と出てくるのが不親切。阿部定が情事の際に愛人の石田吉蔵の首を絞めていたこと(その挙句に殺してしまうわけだが)を説明したほうがいい。
 次に、唐沢が紹介しているデータは財団法人国際医学情報センター時事ドットコム2008年2月15日の記事(オリジナルの記事は削除されている)の情報を元にしている。
国際医学情報センター。

"窒息ゲーム"は自分であるいは誰かに手やロープなどで首を絞め、脳の血流を止めた後にロープを放すことで、短い間ふわふわした感覚を味わうゲームである。主に若者の間で流行しているが、最近、このゲームによる死者が報告されるようになり、CDCはその状況に関してLexisNexisの1970年代以降の新聞記事および窒息ゲームに関するwebsiteレポートを参照に調査を行った。"窒息ゲーム"による死者は1995年に初めて確認され、1995‐2004年の間は年間3名以下であった死者が、2005年には22名、2006年35名、2007年9名と急増し、1995‐2007年における"窒息ゲーム"による6‐19歳の若者の死者は82名(男71女11、平均年齢13.3歳)であった。死亡した状況が明らかな70名のうち、67名(95.7%)は一人でゲームに興じていた際に死亡しており、また、ほとんどの場合、両親は子供が死亡するまでゲームのことに気が付いていなかった。死者は31州に及び、地理的な偏りはなく、季節や曜日の偏りも認められていない。CDCは親、教師および医療関係者に対して"窒息ゲーム"に興じている可能性を示すサインについて、ゲームのことを口にする、充血した眼、頸部のあざ、度重なる頭重、一人で部屋で過ごした後の見当識障害、家具やドアノブに結ばれたロープ、スカーフ、ベルト、またはそれらが床に落ちていることなどを挙げ、十分注意するよう警告している。

時事ドットコム

「窒息ゲーム」で82人死亡=米政府機関が注意呼び掛け

シリコンバレー14日時事】米国内で、手やベルトで自分や友達の首などを絞めて「ハイ」になる遊び「窒息ゲーム」が子どもの間にひそかに広がり、 1995年以降に少なくとも82人が死亡したことが明らかになった。米疾病対策センターが14日、初の全米調査結果を発表した。窒息ゲームは日本では「失神ゲーム」「気絶遊び」と呼ばれ、いじめで行われるケースもある。
 死亡事故の9割近くが男子で、年齢別では11〜16歳が多い。ほとんどが独り遊びでの事故という。95年以降、死亡事故が毎年数件起きていたが、2005年には22件に急増し、流行ぶりが うかがえる。死亡に至らなくても、脳が損傷して後遺症が残るケースもある。
 調査結果を公表した理由について、トービン医学博士は「子どもは窒息ゲームの危険性を理解していない。保護者や教育関係者が危険の兆候に気付けるよう啓発したかった」と説明した。

 2つの記事を混ぜたせいで2度も「平均年齢」の表記が出てきてしまっている。
 3つめ。「プロでない限り、首の血管をうまく締めることなど出来ない」ってどういうことなのか。首を絞めるプロがいるのだろうか。そういう「プレイ」をする店があるのかもしれないが…。
 さらに、疾病対策センター(CDC)は子供の様子に気をつけるよう注意を呼びかけているのであって、アメリカの親たちが毎朝注意しているというのはオーバーだ。
 ついでに書いておくと、「窒息ゲーム」が子供の間で流行っていると書いたせいなのか、デビッド・キャラダインについて触れられていないのも気になる。「トンデモ本大賞」の時はネタにしていたんだけど。

 ……この記事を見て思い出したが、小学校の頃、クラスで意味もなく“息止め遊び”が流行ったことがあった。お互い向かい合ってにらめっこのアンバイで息の止めっこをするだけだったが、これがやたら流行って、とうとう気絶して保健室に運び込まれる子が出るに至って禁止されてしまった。あれも、当時は子供らしい熱中ぶりでタアイないことの限界に挑戦しているんだと思っていたが、今にして思うと、この絞め落しのときの快楽に似たような快感を味わっていたのかもしれぬ。

 この書き方からすると唐沢少年はクラスの流行に乗らずに「息止め遊び」をやっていなかったようだ。「子供らしい熱中ぶりでタアイないことの限界に挑戦しているんだ」などと考える小学生はちょっとイヤだな。

 ……ところで脳内麻薬は、いったん出る癖がつくと、自分でその状態をコントロールすることができる、と、コリン・ウィルソンなどは言う。私らフツー人から見ると酒井法子などは、よくまああそこまでのバッシングを受けて自殺もしないものだと思うが、実はあの会見の時など、自分自身の今の状態に恍惚として陶酔し、快感を感じていたのかもしれない。要するに精神的マゾヒストである。犯罪を犯したタレントの中には、例えば田代まさしのように、なぜわざわざこんなことをして必要以上に世間のヒンシュクを買うのだろうか、と思う行動をとる人がいるが、あれは彼らがいっぺんマスコミに叩かれて得られる、その快感の虜になっているからではないかと思われる。マゾの扉を彼らは開いてしまったのだ。「マゾを開ければ〜」なのである。

 最後の最後でブーメランが。「よくまああそこまでのバッシングを受けて」「なぜわざわざこんなことをして必要以上に世間のヒンシュクを買うのだろうか」って、それは唐沢俊一のことではないか。唐沢も「精神的マゾヒスト」なのか? うちのブログを読むときに(熟読しているらしいですよ)脳内麻薬が出ているのかなあ。まあ、「バッシング」も「ヒンシュク」も酒井法子田代まさしに比べると圧倒的に小さなスケールだけど。
 それにしても、タイトルになっている「酒井法子はマゾ?」ということに全く根拠が無いのに驚かされる。彼女は繰り返しバッシングされているわけでもないんだから、ただの思いつきに過ぎない。スターだったころの快感を味わいたがったりバッシングで快感をおぼえたり、唐沢の考える酒井法子って一体どんな人間なんだ。それに田代まさしがバッシングされて喜んでいるのかどうか。
 

 「落ちる」話だけどオチはありません。


クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 (講談社文庫)

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パンツをはいたサル―人間は、どういう生物か

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柔道部物語(1) (講談社漫画文庫)

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