唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

二十一世紀のジャンヌ・ダルクよ。

 唐沢俊一『君の瞳は1000ボルト』とやらかしたことがある(「裏モノ日記」3月31日付け)。


 今回は『熱写ボーイ』7月号に掲載された唐沢俊一『世界ヘンタイ人列伝』第4回「聖女かヒステリー性変態か/ジャンヌ・ダルクを取り上げる。

 俗世の欲望を捨て去って、信仰に生きるという行為は言うまでもなく崇高なものである。しかし、人間の欲望を全て拒否するという行為はやはり生物の本能に反することであり、なかんずく、生殖して子孫を残すという本能を否定するということは、生物としての存在の連鎖から自分を抹殺することであって、かなりの神経性のストレスをその本人に与えることになる。

 宗教とは関係なしに子供のいない人は決して珍しい存在ではない。っていうか、唐沢俊一だって子供がいないではないか。「生物としての存在の連鎖から自分を抹殺」してストレスがたまっているんだろうか。


 この後、酒井明夫『逸脱の精神史』(日本評論社)から、修道女がハンセン病患者の膿を飲んだ話と猫の吐瀉物を食べた話を「宗教的狂気」を示したものとして紹介している。2つのエピソードは『逸脱の精神史』P.92〜93で一緒に紹介されているので、ネタを探しているうちに発見したのかもしれない。なお、著者の酒井は2つのエピソードを、いわゆる「異食症」が宗教と関連したかたちで現れた例として紹介している。

 しかし、猫のゲロ食いなどはまだ、スケールの小さい宗教的狂気にすぎない。そのようなヒステリーが最も大きく世界史を動かしたのは、かのジャンヌ・ダルクをもってその代表とする。

 「聖女かヒステリー性変態か」とあったのにもう結論が出てるよ。

ジャンヌは1412年にフランスのロレーヌ地方で生れ(原文ママ)、当時フランスとイギリスとの間で争われていた一〇〇年戦争で、フランスのオルレアン地方がイギリスに包囲されているのを、少女ながら男装して鎧に身を包み、フランス軍を率いてイギリス軍を撤退させた。しかしその後イギリスとの宥和政策を取り始めたシャルル七世(ジャンヌのおかげでフランス王位につけた男である)にうとまれ、援軍を得られないまま、イギリス軍に協力するフィリップ三世に捕らえられ、イギリス側に売り飛ばされる。

 オルレアンは「都市」だろう。地方を包囲するというのは大変そうだ。あと、シャルル7世はフランス国王で、フィリップ3世はブルゴーニュである。


 その後、ジャンヌが「神の声」を聞いたのは牛から感染した結核によって幻覚性の癲癇を起こしたからとか、思春期における性的欲望の突出によって起こったヒステリーによるものといった説が紹介されている。…牛から結核に感染するって『Dr.HOUSE』に出てきそうな症例だなあ。

 さて、捕らわれたジャンヌは異端者として火あぶりの刑に処されたわけだが、ここにひとつの問題があった。それは他でもない、ジャンヌがこの時、まだ処女であったということだった。当時の法律では、処女を死刑にすることができなかったのである。
 キリスト教の世界では聖母マリアが処女のままイエス・キリストを生んだということになっているため、処女にはきわめて特殊な聖性があると考えられていた。処女のままでは彼女を抹殺するわけにはいかない。そこでイギリス軍は、数名の看守に、とらわれのジャンヌをレイプすることを命じた。処刑までの数日間、毎日毎晩、ジャンヌは看守たちに犯されまくった。ジャンヌはあまりのことに早く処刑してくれと懇願したとも、しまいには自分の方から看守たちを誘うようになったとも言われている。

 どこのエロ小説だよ。宇野常寛言うところの「レイプファンタジー」ってやつか(たぶん違う)。まあ、『熱写ボーイ』向けではあるかもしれないが。
 実際のところは、ジャンヌは裁判を受けるに当たって検査を受けて処女であることが確認されている。そのうえでイギリス人の看守は彼女に暴力をふるわないよう厳命されていたという(St.maiden Jeanne D’arc参照)。

 とまれ、ジャンヌはその頃にはすでにフランスばかりでなくイギリスでも聖女として名が高くなっていたため、彼女を火あぶりに処することは、イギリスの評判を悪くする危険性があった。“ジャヌ・ダルク(原文ママ)は聖女(処女)ではない”ことを天下に示す必要がある。そのため、ジャンヌは火あぶりの途中で一旦火をとめられ、衣服をはがれて、群衆にその下半身を改めさせられたという。

 …うーん、処女であるかどうかをそんなに簡単に確認できるものかなあ。しかも、火あぶりの途中だし。
 これも「St.maiden Jeanne D’arc」を参照して欲しいのだが、ジャンヌは死が確認された後で「女性であること」を示されたのである。当時、魔女は両性具有であると信じられていて、ジャンヌが異端者であると判断された理由の一つに、彼女が男装していたことが挙げられているのだ。


 ここでジャンヌの話は終わって、ジル・ド・レエの話になる。唐沢は、ジャンヌ・ダルクに「“萌えた”」ジル・ド・レエが彼女の死でショックを受け、数々の凶行に至ったという説を唱えている。

 この時期、レエのもとに抱えられた人物の一人にイタリアの錬金術師フランソワ・プラレチという男がいる。彼がレエに売り込んだのが降霊術だった。その降霊術の“よりまし”にするために、彼は数百人の美少年たちを集め、陵辱した後、残虐な方法で殺害し、その首を悪魔に捧げたという。そして、切り取ったその少年の首が、この世にすでに無い、霊となった人物の声を伝えたという。

 まず、錬金術師の名前は“François Prelati”なので「プレラチ」か「プレラティ」と発音するんじゃないか?と思うのだが。ウィキペディアも「プラレティ」なんだけど。
 次に、唐沢の書き方だと「よりまし」と「いけにえ」がゴッチャになっているような気がする。「よりまし」は死ぬ必要はないんじゃないか? ちなみに、唐沢俊一スレッド@2ちゃんねる一般書籍板で、唐沢の「よりまし」の使い方が適切かどうか話題になった時に一番輝いていたレスを紹介しておく。

770 名前:無名草子さん[] 投稿日:2009/09/30(水) 18:22:34
岡田斗司夫はバカだが、唐沢俊一よりまし


 ジャンヌ・ダルクと言えば、世代的にこの人を連想する。『ワールドヒーローズゴージャス』のジャケットを見たときは愕然としましたが。絵柄変わりすぎだろう…。るりあ046の描いた『JET』のイラストも好き。雑君保プのマンガも忘れちゃいけない。


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