さんざんなコンフォート。
・『映画秘宝』11月号で『唐沢俊一検証本VOL.1』が紹介されました!
『Radio Comfort』(楽工社)に「唐沢俊一のラジオよもやま話」というコラムが掲載されている。ラジオにまつわる雑学が披露されているわけだが、本文に入る以前にタイトルについている説明文に誤用があるので脱力してしまう。
かんわ-きゅうだい ―きう― 1 【閑話休題】
話を本筋に戻すとき、または本題に入るときに用いる言葉。接続詞的に用いる。むだな話はさておいて。それはさておき。さて。
「ここで閑話休題」ということは、今までの記事はみんな余談で「唐沢俊一のラジオよもやま話」が本題だったのか? どんな本なんだ。おそらく編集者が書いたのだろうが、わりとよくある誤用なので気をつけて欲しいところだ。
「ラジオよもやま話」では、最初に終戦時の玉音放送について取り上げられていて、言葉の言い回しが難しかったために理解できない人が多かったのだが、実は太平洋戦争の宣戦の詔書の方が難しい言い回しだった、と書かれている。
…なんでそういう話の流れになるんだろう。玉音放送を取り上げるのなら、まず宮城事件について触れた方がいいのでは。唐沢俊一は日記の中でしばしば『日本のいちばん長い日』に触れているのになあ。わざわざウケを取りにくい話にしなくてもいいのに。
その後でこのようなことが書かれている。
アメリカのSF作家、フレドリック・ブラウンの短編『スポンサーから一言』は、ある日、世界中のラジオから、一斉に同じ時間に、世界各国の言葉で同じ内容の言葉が流れる話である。
唐沢の書き方だと全世界で同時に放送が流れたかのように誤解されるおそれがある。小説の中で放送が流れる時間は「1954年6月9日8時30分」で、時差があるため土地によって放送された時間にズレが存在するのである。「一斉に同じ時間に」を「同じ時刻に」とすればいいかな?
次に取り上げられているのは、徳川夢声のエピソード。
「東京ローズ」ことアイヴァ・ダキノ(Iva D'Aquino)は巣鴨プリズンに投獄されたものの、罪に問われることなく早期に釈放されているが、アメリカに帰国後反逆罪で起訴され禁錮刑を言い渡されている。
夢声は戦犯になるどころか、その後戦後のラジオ放送で吉川英治の『宮本武蔵』(あのヒットマンガ『バガボンド』の原作だ)を朗読し、国民的人気を博した。
夢声は戦前からラジオで『宮本武蔵』を朗読している。もっとも、『夢声自伝』を読む限りでは、最初の頃はそんなに乗り気ではなかったようだ(それに毎回夢声が朗読していたわけではない)。
その次は、佐藤春夫が自宅でラジオ番組の録音をしている最中に急死した話。
佐藤春夫が死の直前まで録音していた番組は朝日放送制作の『一週間自叙伝』。…何故NHK? それから、唐沢は佐藤春夫の死因を「心臓マヒ」としているが正しくは「心筋梗塞」。
次。ラジオドラマ『宇宙戦争』で大パニックが起こった話。定番中の定番ですね。
ウェルズとラジオ局は訴えられたが、実質的な被害者が出ていたわけではなかったので罪に問われることはなかった。
バーバラ・リーミング『オーソン・ウェルズ偽自伝』(文藝春秋)によると、ウェルズがラジオ局と結んだ契約の中で、放送によって生じた予想できない結果については責任を負わない、という条項があったので、ウェルズは責任を問われなかったという。同じ本の中には『宇宙戦争』のパニックの影響で流産したり骨折した人が出たとも書いてある。
最後は、ハリー・フーディーニの死について。
その彼がいよいよ死ぬとき、「心配いらない、僕は君にラジオから語りかけるから」という言葉を妻に遺した。何でまたラジオ、と思うところだが、実はフーディーニが死んだ1920年代には、世間はあの発明王エジソンがついに霊界と交信できるラジオを発明した、という記事が新聞や雑誌をにぎわし、センセーションを巻き起こしていたのだ。
フーディーニは大学生に腹を殴られたことが原因で死んでいる。そのことにも触れておけばいいのに。なお、ケネス・シルバーマン『フーディーニ!』(アスペクト)によると、フーディーニの最後の言葉は「どんなことが起きてもいいように覚悟しておきなさい」だったという(そしてフーディーニの妻はそれを「死を超えて連絡をとること」だと解釈したのだという)。
それから、エジソンが霊界通信機(Spirit Phone)を発明しようとしていたのは本当らしいが、ニール・ボールドウィン『エジソン-20世紀を発明した男』(三田出版会)によると、それは「空間の霊気中をさまよう無数の微小だが不滅の単子を探知し、記録するための高感度な器具」だったという。…よくわからないが凄そうだ。
ついでに、フーディーニが降霊術のインチキを暴いていたことを指して「江原啓之と大槻教授が一緒になったような人間」としているが、適切なのかどうか。「ふじいあきらと大槻教授」とかなんじゃないだろうか。
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