唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

『博覧強記の仕事術』総括。

『唐沢俊一検証本VOL.1』、通販受付中です。タコシェの店頭でも販売しています。
・『映画秘宝』11月号で『唐沢俊一検証本VOL.1』が紹介されました!


 「映画秘宝ナイト」には結局行かなかったのだが、唐沢俊一スレッド@2ちゃんねる一般書籍板にこのような報告が来ていた。

749 名前:無名草子さん[] 投稿日:2009/09/22(火) 00:56:59
「したまちコメディ映画祭」、秘宝ナイトでスタッフが、
唐沢俊一検証本、ロビーで売ってます」というと、
満員の上野東急が大爆笑。中には拍手してる奴までいたぞ。

 これが本当だったら行っておけばよかったかも。…っていうか、唐沢俊一は『秘宝』読者にとってどのような存在なのか。


 前回までで唐沢俊一『博覧強記の仕事術』(アスペクト)本文の検証を終了したので、今回は総括することにする。Amazonの“Ookubo”さんという方のブックレビューがこの本の問題点をわかりやすくまとめているので、自分としては気づいた点をダラダラと書き連ねていくことにする。なお、付録としてついている唐沢俊一が薦める、常備したい本三〇冊」については藤岡真さんが「机上の彷徨」7月2日から4日にかけて詳しく検証されているので、リンク集からチェックしていただきたい。


問題点その1:「博覧強記」を誤用している。
 この時点で「トンデモ本」確定だろう。大事なことなのでおさらいしておこう。P.3〜5より。

 博物学者の南方熊楠の伝記を読んでいたら、「博覧強記の人」という形容があった。博覧の方は博覧会とかという言葉でなじみがある言葉だが、強記とは何か。
 博覧強記を辞書(大辞泉)で引いてみたら「広く書物を読み、いろいろな事をよく記憶していること」と書いてある。強記の記は記憶の記なのだ。

 そして、問題はその「強記」を「博覧」するということである。博覧とは先ほど言った「博覧会」の博覧、つまり「広く一般に見せる」こと、自分の記憶したことを他人(第三者)に呈示することを言うのである。
 強記だけでは、あなたはまだまだあなたの能力を半分しか使っていない。その強記を活かす道こそ博覧、この二つは合わさって初めて大きな力(パワー)をあなたに与えるのである。

 しかし、「博覧強記」という言葉には記憶や知識を他人に見せることまでは含まれていないのだ。そして、本全体にわたって誤用しているのである。このような本をまともに読めという方が無理だ。…さて、来年の「トンデモ本大賞」では『昭和ニッポン怪人伝』とどちらに投票すべきなのだろうか。


問題点その2:矛盾点が多すぎる。
 まず、『博覧強記の仕事術』の中で矛盾することを書いている。たとえば、「基礎が大事だ」という話をした後で「バイエルなんかやらずにジャズにチャレンジしろ」と書いたりしている(P.74〜75)。そのほかには、


・「受験勉強の方法論は、大人の読書にはまったく役立たない」(P.52)→「受験勉強の「システム」というものは、もう一度評価し直してみる必要性があるかもしれない」(P.94)

・「付箋は貼るな、ページを折るな、アンダーラインも引くな」(P.70)→「要は「書き写したい」「線を引きたい」「付箋を貼りたい」ような本に出会えるかどうか、ということだ。素晴らしい内容の本に出会ったときは、あなたの好きなやり方で、その感動や知識を保存しておけばいい」(P.97)

・「本をたくさん読む必要はない」(P.85〜86)→「効率的な読書をしている限り知的快感を味わうことはできない」(P.122〜123)


 …自分でもわけがわかってないんだろうなあ、とウンザリしてくる。編集者である大内明日香女史がちゃんとチェックしてないのも問題だけど。
 もうひとつ、唐沢俊一の過去の著書の内容と矛盾した記述があるのも問題である。

 私の知っている人で一番付箋を多く使うのはと学会の山本弘会長だろう。彼がトンデモ本大賞などで本を発表するときには、その本の縦横に、タテガミみたいにびっしり貼られた付箋が、会場の笑いを誘う。あれは、発表するときにページを引きやすくするための便宜なのである。それから、後で原稿に引用する際のチェック用。彼の自宅の書棚を見せてもらったことがあるが、付箋はほとんどなかった。第一、そんなものを貼っていては、書棚におさめにくくなる。

P.70〜71にはこのようにあるのに、『カルトな本棚』(同文書院)には付箋がビッシリ貼られた本が収納された山本会長の本棚の写真が掲載されているし、山本会長のことを「日本一の付箋消費者(?)」と呼んでいる。記憶力がないのか、ウソをついているのか。それに加えて、P.52〜53では「本当の知識」の重要性が書かれているが、『史上最強のムダ知識』(廣済堂ペーパーバックス)という本を出している人とは思えない言動である。


問題点その3:読者に媚びている。
 個人的にガマンできないのはこの点。「バカにしてるのか?」と思ってしまうのだ。「自分の好きなやり方」で「自分の好きな分野」について勉強すれば「博覧強記」になれるよ、と本全体にわたって説いているのだから、やる気を疑いたくなる。そんなやり方で「博覧強記」になれるのなら誰も苦労はしないって。唐沢俊一は「あとがき」でも次のようなことを書いている。P.182より。

 本書で示したのはあくまで私の例であって、これを読んでいただいた皆さんは、これをマネても、応用しても、全然違う方法でもかまわないので、楽しく、勉強していっていただければいいと思う。

 …じゃあ、『博覧強記の仕事術』という本の存在意義ってなんだったのか?と思ってしまう。結局、書いている内容に自信が持てないから読者に媚び媚びした内容になってしまうのだろう。「『トリビアの泉』は一般人向けにウスい内容にしたから成功した」と言ってる割には、スーパーバイザーの人は「一般人向け」がどういうことなのかわかっていないんじゃないか? 「子供向け」と「子供だまし」は違う、という話を思い出した。それに唐沢は自分語りというか武勇伝を語るのが好きな人なのに、自分自身の成功談が意外なほど語られていないのも不思議。技術で成功したわけじゃないということなのだろうか。


問題点その4:役に立つ技術が語られていない。
 『博覧強記の仕事術』というタイトルであるにもかかわらず、である。中には頷ける部分も一応あるのだが、「別にこの本を読まなくてもわかることだよなあ」という程度の常識レベルの話でしかない。唐沢俊一オリジナルの話はほとんど役に立たないと言ってもいい。「本屋で立ち読みすれば記憶しやすい」(P.42)というのは無茶な話だし、「情報をアナログで管理しろ」(P.94)と言いながら具体的な方法は書かれていない。トリビアの泉』がどうして成功したのかも具体的に説明できていないし。…なのに、最後は「知識への愛が大事だ」(P.174)という精神論になってしまうのだから少しウンザリする。精神論は技術論よりずっと簡単に書けるうえにもっともらしく見えるが、はっきり言ってさほど役に立たない。あるジャンルに詳しくなろうとする場合、技術論に触れる必要があるはずなのだが。…それに精神論としても深くないしなあ。


問題点その5:編集者の役割とは?
 「あとがき」にはこのようにある。P.182より。

 さすがにテレてしまいそうな部分は、ライターの大内明日香氏にお願いして私の談話を基にまとめてもらい、その合間々々を私が埋めるという方式をとってこの本は出来上がった。

 大内女史が筆記しているというのは「はじめに」を読んでいてすぐにわかった。P.11より。

 本書は、その「博覧強記の技能」をあなたに伝授する本である。
 取捨選択、記憶、整理、思考、発想、そして洗練されたアウトプットが出来るように、私のノウハウをもって、わかりやすく説明していきたい。
 博覧強記の世界へようこそ。
 あなたも、誰でも、ちょっとした工夫と努力で現代の博覧強記人になれるのだ。

 「あ、このくだりは大内女史が書いている」とピンときた。なぜかというと、自分は過去に大内女史の著書『すべてのオタクは小説家になれる!』(イーグルパブリシング)を読んでいるのだが(レビューはを参照)、読んでいて一番に感じたのは一種の「押し付けがましさ」というか前のめりになった感じなのである。読んでいるうちに、なんというか、喫茶店で勧誘にあっているかのような気分になってしまう(自分はそういう経験はないんだけど)。たとえば、『すべオタ』P.133より。

あなたの好きな方法で、小説を書き続けてください。
そして、書くことをやめないでください。
そうすれば、あなたはいつか必ず、小説家になれます。

『博覧強記の仕事術』P.113より。

 何となく人と一緒に何かをして、同じものを食べて、同じ本を読んで、ということをしていると、結局「オレの人生って、何だったんだ?」ということになる。
 たった一度の人生、自分の好きなように生きるべきだ。
 あなたが好きなものは何か。それを知り、それを学ぶのが、大人の勉強なのではないだろうか。

 このへんもそうなんじゃないか?と思う。まあ、ニュアンスというか雰囲気の問題なので断言はできないが。
 だから、その後事情通の方から「『博覧強記の仕事術』で唐沢俊一は大内女史に作業をだいぶまかせていて、自分ではあまりやっていない」という話を聞いたときも、さほど意外ではなかった。「裏モノ日記」8月27日には次のようにある。

B社単行本の件、らんぶる。
編集お二人と話はずみ、Kさん、
「分厚い本になってもいいですよ」
とおっしゃってくださる。ただし今の私のスケジュールでそんな
分厚い本を書き下ろすと一年以上かかるので、まずメモを元に
語りおろし、それに手を加える方式でお願いする。
『博覧強記の仕事術』で、そのやり方の便利さ、やり安さ(原文ママ)の基本を
つかんだ気がしている。

 まあ、他人任せにしていればラクなのだろうし、「文章は書きたくないけど、本は出したいなあ」というのび太チックな希望をかなえる手段としてはいいのかもしれない(唐沢俊一は文章を書くのが好きじゃないと思う)。ただ、編集者の力量がモロに出るからよーく考えた方がいいと思うけど。…しかし、唐沢俊一は自分の本のクオリティが気にならないのか?
 以下余談。唐沢俊一は上の日記でスケジュールがどうのこうのと言っているが、もともとかなり遅筆な人で、本を書く約束をしていながらだいぶ待たせている、という事例がいくつかあるらしい。…今の唐沢俊一がどうして忙しいのかはよくわからないけど。
 さらに余談。大内女史のTwitter8月10日付より。

すみません力いっぱい愚痴らせてください。「3年半も原稿を待たせるから、こんなことになるんですよーーーーーーー! だからあれほど言ったのにー!!」

 「3年半」というと、もしかしてこれのことかな? 「来年春先」というと、2006年春には出る予定だったんだろうけど。 

 この他にも「ガセがある」「著書の中で自己を正当化しようとして無関係な話を出してくる」「他人への批判が自分自身にはねかえってきている」という問題点があるのだが、それは唐沢俊一の著作に共通して見られる問題点なので省略する。

 
 以上で『博覧強記の仕事術』の検証を終了する。まあ、「5500部」だか「3000部出して実売500部」だかの本にそれほど影響力もないんだろうけど、本来の趣旨とは違った意味で楽しめた本(つまり「トンデモ本」)ではあった。そういえば、「アスペクトの社長が唐沢俊一のファン」という噂も聞いた。なるほど、出版社の社長さんと仲良くなれば「検証本」も商業出版できるのだろうか。…っていうか、それなら『社会派くんがゆく!』も打ち切られないな。
 なお、下に『博覧強記の仕事術』について、これまで検証したエントリーと見どころを挙げておくので、興味のある方はチェックしていただきたい。…もう、ゴールしてもいいよね?


はじmanyいいガセ。
「博覧強記」の誤用。
以前盗用したサイトを「おすすめサイト」として紹介。

ワシントン殺人事件・解決篇。
クイズ番組で誤答したことについてあれこれ言い訳していたが、結局「本気で間違えていた」だけだった。
STAND UP TO THE READING.
「トイレ読書」で長編小説を読むのは無理。
本屋で立ち読みすれば記憶しやすいというのは無茶。

場外乱闘はこれからだ。
「ムダ知識」を本にしてきた人が「本当の知識」の重要性について語る。
小室直樹も小諸諸島でも持ってねぇ。
「ネットより本の方が良質な情報源である」としているが、その根拠が意味不明。
合言葉は勇気。
「付箋を貼るな」「山本会長は付箋を使っていない」と『カルトな本棚』と矛盾した記述。
「基礎が大事」→「好きなことからやれ」とモロに矛盾した流れ。
結局『スターライト』ってどんな曲?

ひとつ人の世の閾値をすすり。
読書家というものを理解していない。
「ティッピング・ポイント(閾値)」の使い方がヘン。

エヴリバディ・ラヴズ・ザ・サンション。
好きなことを好きなやり方で勉強したって「博覧強記」にはなれない。
唐沢俊一はライター修行をやっていない。
受験勉強は役に立つのか立たないのか。

むーじゅんむーじゅん。
アナログでの情報の管理の仕方を説明していない。
オリエント工業殺人事件。
他人の意見に流されてガセを書く。
教養より明日より愛が欲しい。
実際のところ、「裏の教養」にはそんなに詳しくなさそう。
どーよ?第2章。
「効率的な読書をすべき」なのか「愚作も読むべき」なのか。
第3章だ、YOU!
業界の好調・不調の説明のしかたがおかしい。
いつも通り歴史観がヘンテコ。
「下駄を履かせる」を誤用。

リアル脳内メーカーを持つ男。
「オタク第一世代の代表」と呼ばれる人によるトンデモなオタク観。
KYでJYなKS。
空気を読めない人が「空気を読め」と力説。
素人苦労の無い風。
素人に媚びている。
陸奥守吉行と和泉守兼定。
司馬遼太郎についてのヘンな説明。
うれっ子どうする。
唐沢俊一は本当に売れっ子なのか。
「ファーストチョイス」って?

これは「濃い」ではない。
「マニア向け」を薄めても「一般人向け」になるわけじゃない。
愛のブーメラン。
本当の意味で「博覧強記」な人々へ感情をむきだしにしている。
他人への批判がことごとく自分へとはねかえっている。


博覧強記の仕事術

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