ベロオリゾンテのくたびれもうけ。
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唐沢俊一『新・UFO入門』(幻冬舎新書)P.120〜121より。
当時の作業に関わった人の記録によれば、しかし建設作業の多くは行き当たりばったりで進められたらしい。当初は地元の義経神社に祭られていたオキクルミカムイの石像をハヨピラ(北海道平取町)の神殿に移転させて、石像を中心にした施設を造るだけだったのが、やがてオキクルミの業績を讃えるオベリスクの建立へと発展し、最後にはUFOを招来するための(やはり三つ子の魂百までで、最後までこの団体はUFOを呼びたがっていたようだ)ピラミッドと広場の建設、と、次第に規模が大きくなっていき、そのたびに振り回される会員たちは大変であった。硬い岩盤をツルハシで割り、タガネで砕き、数センチずつ掘っていく作業は気の遠くなるようなものだったろう。しかも、デザインから設計まで、全ては素人の手でなされたのである。
しかし、彼ら信者がプロに勝る唯一のものが、信念である。最初、穴に埋めたベニヤ板を、“水を吸うのではないか”という松村の一言で全て撤去して普通の木材に変えたりというムダな苦労や、彼らの勝手な史跡破壊にクレームをつけてきた文化保護委員会との対立があったりした末に、着工からわずか1年半の短期間で、彼らは、北海道の地、オキクルミカムイ降臨伝承のある平取郊外沙流川のほとりに、直系(原文ママ)15メートルの太陽円盤マーク花壇、全長7メートルのオベリスクを中心とした、記念公園ハヨピラを完成させたのである。
文中にある「当時の作業に関わった人の記録」というのは、天宮清氏のサイトにある文章のことである。
当初は義経神社に祭られていた素朴なオキクルミの石像をハヨピラに移転し、石像を中心とした施設を作る計画であった。
近くの女性会員から「偶像崇拝ではないか?」との意見も出されたが、「自分のために」ではないので、偶像崇拝には当たらないとして退けられた。その後、オキクルミの業績を称えるオベリスクの建立へ発展し、現地に入った我々は、そのオベリスクを建てる強固な基礎作りのための岩盤掘りが最初の仕事になった。
私が到着した頃には、すでに丘の中腹の平らな土地が四角く掘られて、土の下から現われた岩盤を更に深く掘ることが必要であった。ツルハシで岩に筋目を入れ、縦横に筋目が入った時にタガネで岩を砕き、数センチ掘り下げる、この繰り返しであった。
初日は思いきり頑張ったが、翌朝、食器を持とうとして食器が手から落ちた。
オベリスクに表現されたオキクルミカムイは、三日月の形をした舟に乗り、手に稗を持ち、指差す頭上に円盤の形があった。このデザインは美術系の学生であったF氏によるものである。
この像の型は大工仕事の得意なO氏によって作られた。最初、加工しやすい合板を使用したが、ベニアは水を含むのではないかと松村氏より勧告があって、急遽木材の板の加工に切り替えられた。
…いつも思うのだが、どうしてちゃんと引用しないのだろう。天宮氏の名前を伏せている理由も不明だ。唐沢俊一の文章に天宮氏の文章に出ていない情報が含まれていることから、おそらく唐沢は別の資料も用いているはずなのだが、どんな資料なのか明らかではない。「盗用」とまでは言えないかも知れないが、どうにも迂闊な書き方なのだ。
これは『新・UFO入門』という本そのものにも言えることで、UFOの歴史をテーマにしている本である以上、多くの資料に依拠しなければならないというのはやむを得ないのだが、資料の扱い方が雑なのである。上に挙げた文章にも見られるように、引用されている文章と地の文章が区別しにくい箇所が多々見受けられるのがまず問題である。もうひとつ問題なのは、インターネット上の資料に依拠している場合に、サイト名だけ書いてあってアドレスが書かれていないことである。そのおかげで困っていることがあって、『新・UFO入門』P.168〜171には「ネット上にある「宇宙人図鑑」というサイトからひろった宇宙人遭遇譚」が紹介されているのだが、その「宇宙人図鑑」なるサイトが見つからないのだ。『新・UFO入門』が発行された後で閉鎖されたのであれば、それでも構わないのだが、アドレスが分からない以上確認することもできない。たとえば、「宇宙人遭遇譚」の中のひとつに「マレーシアのメーキト・メルタジャム」という町で起こった話があるのだが、メーキト・メルタジャムという町が見つからない。ただ、ブキッ・ムルタジャム(bukit mertajam )という町があって、そこでUFOの目撃談があるので、たぶんそこのことなのだろう。果たして「「宇宙人図鑑」というサイト」が間違えていたのか、唐沢俊一の引用ミスなのか。また、「ブラジルのベリロゾンデ市」での話もあるが、これはベロオリゾンテ(Belo Horizonte)のことだろう。『サカつく』でも「ベロオリゾンテFC」が出てきたっけ。唐沢俊一は『新・UFO入門』の中で、ブラジルでのUFO・宇宙人の目撃談がミナスジェライス(Minas Gerais)州に集中していることに驚いているが、ベロオリゾンテがミナスジェライスの州都であることをスルーしているので首を捻ってしまう。…いずれにしても、引用元を明記しておいてくれないと、読者が後から興味を持って調べようとしたときに困ってしまうので気をつけて欲しい。巻末に参考文献と参考にしたサイトのリストも欲しかったなあ。時間が無くてリストを作れなかったのだろうか。
結局のところ、唐沢俊一は資料の使い方が下手なのだと考えざるを得ない。「古本についてたくさん書いているじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、その多くは一冊の本を紹介する文章であって、『新・UFO入門』のように多数の資料に依拠しつつ自分の説を組み立てていくという作業はあまりしたことがないのではないか。もしかすると、文章の書き方や資料の使い方を教わったことがないのかもなあ。普通だったら、大学で論文を書くときに教官に教わるし、ライターだったら新人の頃に編集者に教えられるのではないか?と思うのだが。資料の使い方がルーズなせいで、ネット上から平気でコピペするようになり、ラクして原稿を仕上げることを覚えてしまったのではないか?とも思うのだが、どうだろう。
※追記 同下宇陀児さんのご指摘に基づき訂正しておきました。
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