がんばれ!!ロ○コン
タイトルに特に深い意味は無い。
『パチスロ必勝ガイドNEO』10月号に掲載されている『唐沢俊一のエンサイスロペディア』第29回では『がんばれ!!ロボコン』が取り上げられている。
パチスロに懐かしの作品が登場するのは、嬉しさと共に“こんな作品が……”という意外性も感じるものだが、『がんばれ!!ロボコン』がパチスロになるということは、実は番組の企画としては当然というか、当初からの目的にかなったものなのである。
として、『がんばれ!!ロボコン』がキャラクターを商品展開していくことによって制作費を補っていた話を書いている。
確かにその通りではあるのだが、それだったら現在放送されている特撮・アニメは最初からキャラクターを商品展開することを織り込んで製作されているわけだから、どんな作品がパチスロになっても当たり前、という話になってしまう。「『ロボコン』はキャラクタービジネスのさきがけだった」とでも書いておけばよかったのでは。
と思ってたら、その先にこんなことが書いてある。
とはいえ、安っぽい作品にしてしまっては視聴率も落ちる。頭を悩ましていた平山(引用者註 『ロボコン』のプロデューサーである平山亨)が着目したのは、東映動画(現・東映アニメーション)の、制作費の赤字はマーチャンダイジング(オモチャなどの版権料)で埋める、というやり方だった。
マーチャンダイジングとは自らキャラクタービジネスを行って収入を得ることを意味していて、おもちゃなどの版権使用料に限定されるわけではない。なお、版権使用料はロイヤルティーと呼ぶ。
東映にはもともと『忍者ハットリくん』や『丸出だめ夫』というコメディシリーズの伝統があったが、この時期は変身ヒーローものに押されてほとんど製作が途絶えていた。ひさびさの家庭向けコメディの成功は東映の底力を発揮したものと言える。
「伝統」というからには2作だけでは弱いのではないか。むしろ、東映が特撮コメディで力を発揮していくのは『ロボコン』以降で、『ロボコン』の成功はいわゆる「不思議コメディシリーズ」につながっていくのである。唐沢俊一は「不思議コメディ」を見ているのかどうか。そういえば、『燃えろ!!ロボコン』にも触れていないな。ロビーナちゃん(加藤夏希はこれがデビュー作)が可愛いので必見。
平山も、原作者の石ノ森章太郎も語ってはいないが、ロボコンの原型となったのは『丸出だめ夫』だろう。共に、常にテストでは0点しか取れないダメな主人公で、がんばってもがんばっても0点からは脱却できない、というルーティン(繰り返し)の世界が、ユーモアをかもしだしていた。『丸出だめ夫』には、だめ夫をはげますボロットというお手伝いロボットが出てきたが、このロボットの造形が、ロボコンにおけるロボットたちのリーダー、ガンツ先生にちょっとだけ似ている。
根拠の無い思いつきでしかない。しかも、ボロットとガンツ先生って似ているか? 色はどっちもメタリックだけど。
それに『ロボコン』のベースとなった作品を挙げるとすれば平山亨もプロデューサーとして参加していた『柔道一直線』の方がいいだろう。紙谷龍生氏の日記より。
中でもロボコン誕生秘話はモノカキのひとりとして大変胸に迫るものがあった。
話は『柔道一直線』の頃にさかのぼる。東映動画の『魔法使いサリー』(最初のシリーズね)のキャラクター商品が売れているのを見て、当時『柔道一直線』のプロデューサーだった平山氏は、実写でも売れるようなキャラクター商品はできないかと考えたのだけれど、「桜木健一の顔をくっつけてもなぁ……」まあ、売れないでせう。
そこで、主人公がロボットの根性物だったらどうかということで『ロボコン』の企画を立てたのだけれど、東映のエライ人がギャグ嫌いだったものだから企画を蹴られてしまった。でも、平山氏は企画を机の中に執念深くしまっておいたんだな。
何年かして、新しい枠が取れたから何かギャグものの企画をくれという話が舞いこむ。いつまでに欲しいのかと訊くと「今日中」(ああ、よくある話だ)。そこで、机から『ロボコン』の企画書を取り出して渡すと、今度はトントン拍子にコトが運んだ、というわけ。
さらに石森プロの説明を読むと、ロボコンと丸出だめ夫のキャラクターはだいぶ違うと思わざるを得ない。
70年代の高度成長期に制作されたこの『がんばれ!!ロボコン』は、どんな困難も持ち前の根性で乗り切る事ができるという、実に時代背景を色濃く反映したテーマをもった作品だ。時には信頼を裏切られ、時には激しくクラッシュしながらも何度も何度も立ち上がり、最終回では見事A級ロボットに昇格してロボット村の村長に就任するほどに成長する。こんな不屈の精神をもち、自らの感情をストレートに表現するロボコンは、ロボットでありながら人間以上に人間臭く、多くの人たちの共感を呼んだ。
ロボコンの「コン」は「根性」の「コン」というわけか。石森プロの紹介文にはロボコンが獲得した点数も書かれているが、ロボコンは毎回0点だったわけではない。…ちゃんと見ていたのかなあ。なお、余談だが石森プロの『がんばれ!!ロボコン』の紹介文には「電撃!稲妻!熱風!脅威の忍者ライダー登場」というアオリがあって笑ってしまった。それは別の作品だよ! 「脅威」は「驚異」なのかも。
※追記 その後紹介文は訂正されました。よかったよかった。
ガンツ先生は人間とロボットたちの共存を目標に、半人前ロボットたちを人間社会に住まわせ、学習させる。毎回、善行をほどこしたロボットには点数が与えられるのだが、ロボコンだけは毎回0点。脚本家の上原正三は、ロボコンがかわいそうになり、何度も100点を取る話を書いて渡したが、平山に0点に書き換えられたという。平山は「目標がかなってしまったら、ロボコンはロボコンを応援している0点しか取れない子供を追い抜いてしまう。0点のままだからずっと、ロボコンは子供の友達でいられるのだ」という、確固たる信念を持っていた。
平山氏がそのように思っていたのは本当かもしれないが、ウィキペディアにはもっと露骨なことが書かれている。
「ロボコンに100点を!」というファンレターは多く、メインライターの上原正三までもが「たまには、100点でも良いのではないか?」といってきた。平山は、「100点を出すと、視聴者が離れる」と思い、断り続けた。
クリエイターとしての信念とプロデューサーとしての計算が共存しているのが面白い。唐沢俊一は『仮面ライダー』でショッカーが姑息な手段ばかりを取るのを時代のせいだけにしていて、制作費の問題をスルーしていたが(詳しくは5月16日の記事を参照)、経済的な事情を無視した話は空論に陥ってしまいがちである。…だから、自分もそろそろ唐沢俊一の経済的な事情を検証してみようかと思っているのだが。「唐沢俊一の研究―その人脈と金脈―」という感じで。
もうひとつ、ウィキペディアにはこのような文章もある。
「(ガンツ)先生の採点は、機械の故障や地震でどうにでもなる。いい加減なものだから、気にしなくてもいいのだ」という平山(元ダメ少年)からの、現代のダメ少年へのメッセージである。
唐沢俊一の文章にある「0点のままだからずっと、ロボコンは子供の友達でいられるのだ」よりはずっと健康な考えだと思う。「いつまでもダメなままでいい」という考え方と「0点を取っても気にせず頑張ろう」と考え方は似ているようでずいぶん違う。ダメ少年でもそれくらいはわかっている。
※追記 のえさんのご指摘に基づき訂正しました。
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