サラマンダー・ウォーズ。
『ラジオライフ』8月号の唐沢俊一の近況欄を読んで驚いてしまった。
8月16日(日)、大阪・トリイホールで行われる演芸会に出演。快楽亭ブラック、坂本頼光、旭堂南湖といいう(原文ママ)、知る人ぞ知る濃い面々と共演します!
8月16日といえば夏コミ3日目でもある。…ということは、唐沢俊一は今年のコミケに出ないのだろうか。もしくは、コミケに午前中だけ出てそのまま大阪に行くとか。…ハードスケジュールだなあ。病み上がりなんだから無理しないでほしい。まあ、コミケの前にはメールでアポを取るのでなんとか都合をつけてもらえればいいんだけど。
では本題。今回は『フィギュア王』№137掲載の『唐沢俊一のトンデモクロペディア』第50回「SF的風刺の元祖」を取り上げる。
古今書かれたSF小説の最高傑作は何か、と言うと、さまざまな人がさまざまな主張を述べるに違いない。
ある人は『幼年期の終わり』を最高傑作と言い、ある人は『われはロボット』こそ、と言って譲らないかもしれない。ニューウェーブ派であれば『結晶世界』の魅力をとき、スペース・オペラファンなら『宇宙の戦士』を挙げ、……とキリがないだろう。
『宇宙の戦士』はスペース・オペラなのだろうか? スペース・オペラと言ったら『レンズマン』や『キャプテン・フューチャー』などを挙げるべきなのではないだろうか。
この後、カレル・チャペック『山椒魚戦争』について説明が始まる。
チャペックは、現代SFには、“ロボット”という用語を発明し、提供したことで知られている。戯曲『R・U・R』(ロッサム万能ロボット会社)に登場させた人造人間に、彼はチェコ語で労働を意味する“ロボータ”から造語した“ロボット”という名をつけたのだが、これにはまた一説あって、ロボータではなく、同じく賦役労働を意味する“ロボチッチ”が語源だ、という説もある。どちらでもいいようなものだが、“ロボータ”でよかったような気がする。“ロボチッチ”ではちょっと語源としてありがたみがないように思えてしまうのである。
「ロボット」の語源は、チェコ語で「強制労働」を意味する“robota”、またはスロヴァキア語で「労働者」を意味する“robotonik”から来ているとされている(ちなみに「ロボット」という呼称を考えたのはチャペックの兄のヨセフ)。“ロボチッチ”が語源という説は調べた限りでは見当たらなかったが、どこかにあるのだろうか。そもそも“ロボチッチ”ってどのように表記するのか。
この作品はドイツ、ロシア、そして多くの共産主義国で発売を禁止されたり、大きな削除を受けたりといった扱いをされた。いうまでもなく、山椒魚を共産国家のパロディと受け取った政治指導家たちの手によるものである。終盤近くに、山椒魚のリーダーの名をかたる人間の独裁者・アンドレアス・シュルツなる人物のことが出てきて、彼は第一次大戦のときはどこかの軍で曹長を勤めていた、と書かれている。誰のことを言っているかは明白だろう。
『山椒魚戦争』が執筆された1935年はナチスが台頭していた時期なので、チャペックがナチスやヒトラーを念頭に置いて書いていたことは間違いないし、全体主義批判として読むのが妥当であろう。。…しかし、文章のアタマは「共産主義国」について書いているのに、どうして締めがヒトラーをモデルにした人物のことになっているのか。なお、『山椒魚戦争』の中でロシアが水没するシーンがあるため、ソ連時代に発行されたロシア語版『山椒魚戦争』では該当箇所が削除されている。
SFが、こうした現実世界の風刺になっているという設定は、『宇宙の戦士』などの作品の直接の元祖でもある。最近、そういった、この現実を二重写しにする作品が少なくなった。いま、あらためて、この74年前の作品を読むと、これがSFというものだ、という新しい感動を味わうことができる。
「少なくなった」と言えるほど唐沢俊一が最近のSFを読んでいるのかどうか疑問。あと、唐沢は『山椒魚戦争』が書かれた年を「1936年」としているので、「74年前」だと計算が合わない。
そもそも『山椒魚戦争』は今回のタイトルにある「SF的風刺の元祖」と言えるのだろうか。H・G・ウェルズのSF小説にも風刺の要素はあるし、『山椒魚戦争』以前にも、たとえばオルダス・ハックスリー『すばらしい新世界』がある。あと、「現実世界の風刺」をもって「これがSFというものだ」とするのはSFを狭く解釈しすぎているような気がする。山本弘会長に話を聞いてみたいような。ついでに書いておくと、今回のソルボンヌK子のイラストはいつにも増して雑。
…まあ、唐沢俊一も「小説家」なんだから、「現実世界の風刺」になっているSF小説を書いてみたらいいと思うけど。ちなみに『山椒魚戦争』の英語版タイトルは“War with the Newts ”。…イモリ?
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