唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

近頃の若い者は・その3。

 今回は『オタクアミーゴスの逆襲』(楽工社)に収録されている「オタアミ鼎談」の「その5」を紹介しながら、この本についてまとめてみたいと思う。
 「オタアミ鼎談」の「その5」のテーマは「オタアミの未来」である。P.155より。

唐沢 しかしなんですかね、われわれがこういうことを十何年やってきて、似たようなことをするような人がもうちょっと出てきてもいいように思うんですけど。


岡田 そうですね。


唐沢 B級映画の会をやっても、みんなただ映すだけとかで。ただ、講演とかで編集した動画を見せたりすると、みんな「こういうのがあったんですね」とか「こういうやり方があったんですね」と驚くんですよ。


岡田 MADビデオも単に笑える例としてではなくて、進化過程とかみんながどういうことを考えて作ったかとかも含めて見せるとかなり面白いんですけど、そういう発見がないんですよね。

 いつもの「オタク第一世代の後を継ぐ者がいない」理論である。だから引退したいけど仕方なく今でもオタクをやっているという。…今すぐやめてもらっても別に誰も困らないんじゃないの?B級映画の発掘をやっている人だったらいくらでもいると思うけどなあ。ちゃんと後継ぎを探しているのか?育てようとしているのか?と思ってしまう。

次。P.155〜156より。

唐沢 youtubeとかニコニコ動画にある映像とかも、これをこの順番で見てみようとか、それからこれを見た後で公開バージョンが違うこれを見てみようとか、そういうことをサジェスチョンできるのであればもっと面白い。私は正直言って、youtubeとかニコニコ動画が出た段階で、もうオタクアミーゴスの時代じゃないと思いましたよ。それはなぜかと言うと、いちいち狭いイベント会場で詰めて、暑い思いや苦しい思いをしなくてもちゃんと見ることができるんだから。要はそういう見せ方ですよね。

 唐沢俊一は自分の利害が関係してくると頭が働くのかもしれない。まさしく唐沢の言う通りで、動画の共有サイトが登場した時点でオタクアミーゴスがイベントを開く意味はなくなってしまったのである。今回『オタクアミーゴスの逆襲』で紹介されている動画の大半はネット上やDVDで簡単に見ることができるのだ。わざわざイベントに出かける必要はないのである。さらに言えば、インターネットの存在自体がオタアミを無効化したのだと言えるのかもしれない。ネットというのは「しょうもないもの・少し外したもの・ヘンなもの」の発掘・保存に適したメディアであって、加えてそれを見た人が感想や紹介文をブログやサイトに書いたり、ニコニコ動画のようにコメントをつけることによって、たくさんの人々にあっという間に広めることも出来るのだ。そうなると、オタクアミーゴスはもはや社会的使命(一応あったと思う)を終えたのではないか?とも思えてくる。…そうは言いながらも、唐沢俊一は映像の見方を「サジェスチョン」したがっているし、まだまだ仕切りたいようなのだが。P.156より。

唐沢 逆に言うと恐ろしいことに、今ではネタが誰でもでも手に入るわけだから、見せ方でトーク力であるだとか構成力とあるだとか(原文ママ)がわかっちゃうということですよね。われわれは早く見る方に回りたいんだけれども、なかなか似たようなことをやってくれる次の世代が現れない。

 いや、だから、ネタを発掘している人はちゃんといるんだって。ちょっとググればわかるだろうに。唐沢のように高みに立ったつもりで解説したり講釈しないだけであって。解説や講釈がなくても直接ネタに触れることによって楽しみ方を覚えていくものなのである。だから、一般人が手に取りにくい古本の紹介と同じようにサイトや動画の紹介をしようとすると間違いなく失敗するのだ。本人は『唐沢俊一の裏モノ見聞録』『怪網倶楽部』『トンデモ版ユー・チューブのハマり方』が失敗している理由がわかっていないのかなあ。一般の人間はよっぽどバカだと思っているのだろうか。それに他人のネタを借りることに無頓着なのも気になる。…しかし、唐沢俊一は自分には「トーク力」と「構成力」があるのだと思っているんだなあ。…いや、まあ、たぶんその通りだと思うけどね。

P.156〜157より。

唐沢 今の若い人は「世の中のこういうものを知らない」とか、「こういう風に考えてるやつがいるんだ」とか、フリンジ(周縁)の方を追っていく努力とかが足りない。あと、自分の趣味の範疇から外れてると、まったく興味を持たないんだってね。テレビ局の人が「これについて話してくれませんか」ってお願いしても、「それ知らないから」「それ興味ないから」って切っちゃうんだって。「初めて見た。これはこうですね」とか「僕の見るところはこうですね」とか話せばいいんだけど、そもそもそういうことに興味を持たない。酔狂さが足りないというのがあるんだよね。だって、萌えアニメが好きな人は萌えアニメ以外見ないんだもん。

…勝手に「脳内若い人」を作り上げられても困る。「萌えアニメが好きな人は萌えアニメ以外見ない」って…大嘘もいいところだ。フリンジばかりを追いかけて中心部分をおろそかにしたせいで大変なことになっている人もいるしなあ。それから「興味を持つ範囲が狭い」というのとテレビ局の取材の受け方って別問題なんじゃないか?自分の知らないことについておいそれと語らないということは誠実さの表れとも思えるし。興味も無いのに痛車イチローについて語って大変なことになっている人もいるしなあ(詳しくは2008年11月7日4月14日の記事を参照)。

P.157〜158より。

唐沢 その不覚というのも今の若い人はやらないのね。早くもっといろんなもの、自分の規格から外れたヘンなものを面白がるということを、岡田さんあたりが理論化しないとダメなんじゃないですか。


岡田 いや、そんなのもういいですよ。それを理論化するよりは、単に目の前の人を楽しませたいしかないと思うんですよ。たとえば大学で講義したりして人前で話すたびに言うんですけど、目の前の人にウケたいじゃないですか。オタクとかの共通の趣味で集まってくる人じゃなくて、その場にたまたま連れてこられた人にもウケたら仲間が増えるから、面白いものを見せたいと思うんですよね。

 
 結局のところ、2人とも「オタクのナビゲーター」というよりはウケ狙いの激しい人なのだなあ。「みんな俺の面白い話を聞け!」というか。ネット上のネタだとそれができないからつらいだろうねと思わず同情。ちなみに、岡田氏は「オタアミ」のイベントで流している映像を大学の授業でも流しているというが…どんな授業なんだか。

P.158より。

唐沢 こないだ海外で作られたゲームの講演を頼まれたんですよ。そしたら、そのゲームの内容に似たことを水木しげるがマンガに描いていたので、スタッフにそのマンガを紹介したら「いや、まったく知らなかった」なんて言うの。普通、開発の段階で誰か一人のアンテナに絶対引っかかってこない?仮に日本版の開発会議なんかで何十人もの人間が集まって、ゲームの内容をどう伝えるかという時に、一人も「水木しげるのマンガに似たようなのがあります」と言わないのが不思議なんですよね。

 その講演とはこれか。…それにしても自分が水木しげるの『宇宙虫』をたまたま知っていたからってそこまで言うのか。唐沢俊一だって、おいしいネタをしばしばスルーしているんだから、他人のことをとやかく言えるはずがないと思うのだが。「普通の人はマニアックなネタを知らないものだ」と考えずに「俺の知っているネタを知らない方がおかしい」と考えちゃうのだろうか。

P.158より。

岡田 僕はオタク文化というものは教養化して面白いものだと思っている。だから、何か面白いなと思ったら、これは何でできているんだろうと遡ったりして、いろんな方向から見るのが面白いと思うんです。ただ、やっぱり時代とか人によって楽しみ方って変わってきちゃってますね。「ガンダムが好きだ」と言ったら、「ガンダムというのは何でできてるんだろう」とか「どういう影響を受けているんだろう」という風に、歴史像的に見るとか人物像的に見るとかアニメの歴史として見るとか、いろいろ見方はあるんです。だけど、そうじゃなくてガンダムについていろんな商品を買うとか新作を求めるとか、そういう風なところばっかりで、パースペクティブがあまりないんですね。それで僕は、「あ、みんなお勉強が嫌いになったんだな」と思ったんです。

 もうどうにかならないかなあ。「脳内若い人」に「脳内みんな」。自分の都合のいいように他人を設定するのはやめてほしい。『ガンダム』はそれこそさまざまな見方がされている作品なんだから「いろんな商品を買うとか新作を求めるとか」と決め付けるのはおかしいよ。それにしても、岡田斗司夫唐沢俊一がどうして一緒にユニットを組んでいるのかよくわからない。かつて「ぴあ」での「ガンダム論争」で唐沢俊一が批判していたSFファンってまさしく岡田斗司夫みたいだし(詳しくは2008年11月20日の記事を参照)。

見る方はそんなテーマなど理解できるアタマもないのだが、何となく「ガンダムにおけるテーマは…」などと口走れば理知的に見えそうなので争ってファンを自称する様になる。もっともいくら愛のなんのとワメいたってファン以外の人間からみれば阿呆としか見えないから、ファン同士徒党を組んで、お互いに「このメカの魅力は…」「SF的設定が…」とバカのエール交換をやるようになる。そうして自己満足にひたっているうちに、ふと周りを見渡すと、いつの間にか自分達が多数派になっていることに気がつく。そうすると、こういう連中はグレン隊と同じで、今度は少数派の非SFファンたちをイジメにかかり、「ゴジラ」だの「ガンダム」だのの悪口をいう人間をよってたかってぶちのめす…僕のやり方で今のブーム(狂暴的と形容詞をつけたい)のルーツをたどれば、このようにやはり「ゴジラ」にその諸悪の根元(原文ママ)があることになるのです。

ほらね?最近でも唐沢俊一は「楽しみに理屈での評論は不要なものだ」と「教養化」に反することを言っている(詳しくは4月4日の記事を参照)。その割りに岡田斗司夫に「理論化」を希望しているのがよくわからないが。そして、一番よくわからないのは、唐沢も岡田も若者・若いオタクを批判している点では共通しているのだが、実は批判する理由は真逆であるということだ。岡田は「お勉強が嫌い」だと批判しているのに唐沢は「無理に勉強している」と批判しているのである(詳しくは2月13日の記事を参照)。

 ところが僕たちより下の人間、つまり後からオタクになった者たちというのは、「オタク足るべき」というのがまず先にあって、それならばアニメを見なくてはいけないだろう、という後付けの強迫観念で見ている人たちが大部分。

…2人とも相手の話を聞いてるのか?と不安になる一方で、もしかすると「オタク第一世代」より年少の人間を批判するためにあえて知らんぷりをしているのか?とも思ってしまう。自分も含めて岡田や唐沢より若い人間は勉強してもしなくてもダメってことになっちゃうもんなあ。ムチャクチャだ。…いずれにしても、この人たちは本当に仲が良いのか?とは思う。


 くりかえしになるが、オタクアミーゴスの社会的使命は動画共有サイトが出現した時点でほぼ終了していたと思う。「ほぼ」としたのは、方向性を変えればまだやれることは残っているように考えられるからだ。たとえば、ソフト化されていない作品を発掘して商品化すること、これなどは「プロ」でないとできない仕事だ。また、製作者をイベントに招くなどして直接話を聞くというのもいい。『オタクアミーゴスの逆襲』でも眠田直氏が『チャージマン研』のプロデューサーや伊勢田勝行監督と話をしたことを語っているが、今後もオタアミが活動するとしたら、そのような方向性でいくというのはアリかもしれない。とにかく、ネットでは出来ないことをやるしかないということだ。ただ単に映像を紹介するだけではもうダメだということは間違いない。

 最後に岡田斗司夫氏による『オタクアミーゴスの逆襲』のまえがきを紹介して終わりにしたい。これが実に味わい深い文章なのだ。P.3〜4より。

 ずっと前から、僕は「大人のオタクってなんだろう?」と考えていた。
 頼りになるオタク。尊敬できるオタク。金を稼げるオタク。世間に知られたオタク。
 家庭を持ったオタク。モテるオタク。いつまでも最新情報に詳しいオタク。業界で一目置かれるオタク。大学教授になるオタク。政府の諮問機関に呼ばれるオタク。
 いろんな「大人のオタク像」があるだろうけど、そんな「立派なオタク」になんかなりたくない。僕が目指したのは「40歳、50歳を越えても楽しそうなオタク」「歳を取るごとにやたら元気になっていくオタク」だ。
 『ガンダム』や『宇宙戦艦ヤマト』や『デビルマン』を、子供の頃の憧れの視線だけでなく、大人の渋い視点でも語ることのできる中年男。若いオタクや予備軍たちを笑わせ、話に引き込み、「昔は熱かったんだなぁ」と感心させて悦にいるような、そんなオヤジオタクになりたかった。
 「こんな作品、知らないだろう」「こんなエピソード、知らないだろう」とマジメなオタク兄ちゃんを煙に巻き、オヤジのホラ話とののしられる。それでもたま〜に可愛い女の子が「でもちょっと、オジサンっぽいオタクも素敵かも」と誤解されてモテかけて、でもやっぱり本質は単なるオタクだからフラれる。
 そんな笑えるようなカッコ悪いような、それでも元気だけは余ってるような不良オヤジオタクになりたかった。


…今の岡田氏はかつての理想をどれだけ実現できているのだろうか?今を楽しめていないからこそ若者を批判してしまうのではないだろうか?年長者には「歳を取ったらああいう風になりたい」と後から続く人間が素直に思える生き方をしてほしいと思う。今の岡田斗司夫唐沢俊一を見てもとてもそうは思えないのが残念である(眠田直氏は今でも新作を追い続けている点は素晴らしいと思う。オタアミの中では一番情報収集能力が高いし)。
 なお、近々岡田氏に関連したネタをまたやるつもりでいる。『オタクはすでに死んでいる』の検証も夏までにはやるつもり。


 お知らせ。
 この記事を最後に2週間ほどお休みさせていただきます。
…今まで何度も「ペースダウン」予告をしておきながら失敗しているし(いや、一応ペースはだいぶ落としているよ?)、『オタク論2』『昭和ニッポン怪人伝』など新刊も出るのであんまり自信がないんだけどw、GW明けから体が塞がってしまうので今度こそ本当にお休みです。唐沢俊一がなにか仕出かさなきゃいいんだけど。…あ、コメントはなるべく返すつもりなのでよろしく。しかし、唐沢俊一はもう単著を出せないのか?と思ってしまったり。
 

オタクアミーゴスの逆襲

オタクアミーゴスの逆襲

水木しげる (ビッグコミックススペシャル)

水木しげる (ビッグコミックススペシャル)

SPORE スポア

SPORE スポア

怪網倶楽部

怪網倶楽部

トンデモ版・ユーチューブのハマり方

トンデモ版・ユーチューブのハマり方