盗パク黙示録カラサワ。
唐沢俊一を検証しているとたまに「ざわ… ざわ・・・」となりますw
唐沢俊一が現在雑誌で連載しているコラムは、『トンデモクロペディア』(「フィギュア王」)、『古今東西トンデモ事件簿』(「ラジオライフ」)、『エンサイスロペディア』(「パチスロ必勝ガイドNEO」)の3つだが、今回初めて『エンサイスロペディア』を取り上げてみる。最近ではアニメや特撮が題材になったパチンコ・パチスロの機種が多くなっているので、唐沢俊一がモトネタの紹介をするという内容のコラムである。まず、プロフィールにこんなことが書かれていたのが面白かった。
大学時代はパチンコ、パチスロの鬼だったが、最近は忙しくてあまりやれないのが悩みの種。
へえ、そーなんだー。
では本題。「パチンコ必勝ガイドNEO」2009年1月号『エンサイスロペディア』第20回では、福本伸行『アカギ 闇に降り立った天才』(竹書房)が取り上げられている。自分は福本作品を愛読しているので気になった点を指摘してみる。
80年代の終りごろ、片山まさゆき、西原理恵子といった作家たちによって、それまでごく一部の限られた麻雀ファンたちだけの読み物であった麻雀マンガが、一般読者にも受け入れられはじめ、それまで、その間口の狭さから、正当なマンガのジャンルとして業界で認められていない存在であったこの分野に、一気に光が当たりはじめた。
片山まさゆき『ぎゅわんぶらあ自己中心派』が「ヤングマガジン」で連載を開始したのは1982年、そして能條純一『哭きの竜』が「別冊近代麻雀」で連載を開始したのが1985年であることを考えると、麻雀マンガが一般の読者に受け入れられるようになったのは「80年代の終りごろ」よりも早かったと考えるべきだろう。
そのような状況の中で、作者の福本伸行は『天 天和通りの快男児』で、麻雀という素材を用いながら、主人公の天貴史に深い人間性を持たせ、そのビルドゥングス(人間的な成長)を描くという、大変にドラマ性の優れた作品を描き、話題になった。しかし、その作品中で、最も人気あるキャラとなったのは、およそ人間性というものの最も希薄な狂気と異端の天才、赤木しげるであったのは皮肉である。
細かい所から指摘しておくと、「ビルドゥングス」ではなく「ビルドゥング」(Bildung)。「ビルドゥングスロマン」にひきずられているんだろうけど。しかし、「麻雀」「ビルドゥングス(ロマン)」と来ているのに『麻雀放浪記』が出てこないのは何故なのか。『麻雀放浪記』を知らなくても『哲也』を読んでいる人は多いだろうに。
…それにしても、唐沢俊一は『天』をちゃんと読んだのかなあ?天は作品の開始時にはだいぶひょうきんな性格をしていたものの、東西戦で東のリーダーとして登場したときにはかなりシビアな性格に変わり実力も上げていたことは確かだが、その後成長する描写はあまり無い。むしろ『天』に登場する人物で一番成長しているのは井川ひろゆきである。ひろゆきは天や赤木とともに原田、僧我といった西の実力者と戦うことで苦しみながら実力をつけていったのだ。それから、『アカギ』の赤木しげるは人間性が希薄であるといってもいいが(鷲巣様に悪魔呼ばわりされてるし)、『天』の赤木しげるはわりとお茶目な人である。ひろゆきにいろいろと教えているし、夜中にフグさしを注文して一口食べただけで残しちゃうようなワガママな人なのだ。そういったところと飄々としたところをあわせもっていたのが人気の原因だったと思うけれど。さらに付け加えると『天』のクライマックスではアルツハイマー病に罹ったことで自殺を決意した赤木とそれを止めようとする『天』の登場人物との会話が延々と続く展開になっていて、『天』の最終盤の主人公は赤木といっていいくらいである(麻雀漫画なのに全然麻雀しないのが逆に凄い)。このことも押さえておかなくては、赤木しげるというキャラの魅力はわからないだろう。スピンオフどころか本編のラストまで乗っ取っちゃってるんだから。
…さて、唐沢俊一は赤木しげるの人気についてこのように分析している。
これは、マンガというジャンルそのものの根本に、リアリズムを超えたナンセンスやシュールなパワーというものがあるからだろう。そして赤木の青年時代(1950年代から60年代にかけて)を舞台にしたこのスピンオフ作品は、主人公の赤木以上にエキセントリックなキャラクターたちが続々と登場し、一回の対局が何年にもわたって描かれ、その間に卓を囲む者たちの心理描写が延々描かれるという、破天荒な構成の作品になっている。
マンガ作品としての構成は『天』の方がずっと上なのだが、インパクトで言えば『アカギ』の方がはるかに強い。これも、マンガというものの原点にある何でもアリのムチャクチャさを『アカギ』が持っているからであり、そのパワーを引き出しているのが、他でもない主人公のアカギ自信であるということだ。
マンガの魅力はまず、キャラクターであるということは数多くの人気作品を世に送ってきた小池一夫の持論だが、その論はまさに、この『アカギ』によって証明されたと言えるだろう。
「赤木以上にエキセントリックなキャラクター」って鷲巣様しかいないような気が。アカギと対戦した矢木も市川も浦部もわりと普通の人だったと思う(まあ、市川は盲目なのに凄腕の打ち手だから「エキセントリック」かな?)。…っていうか、鷲巣様を主人公にした『ワシズ 閻魔の闘牌』というスピンオフ作品にどうして触れないんだろう?スピンオフ作品からさらにスピンオフしているのは珍しいはずだから、「マンガの魅力はまず、キャラクターである」という理論を証明するにはもってこいなんだけどなあ。なにせ「ワシズコプター」だもんなあ。余談だが、鷲巣様がアカギに追い詰められる様に萌える人が多数いる模様である。そういえば、うちの妹も『銀と金』の銀さんと森田に萌えていたな。…女の子ってよくわかんないや。
それから、「一回の対局が何年にもわたって描かれ」ているのは『アカギ』に限らず『天』でも天と原田の「二人麻雀」は決着まで2年以上かかっている。まあ、最近の福本作品は全体的に時間の流れが遅くなってきているんだけど。『カイジ』の遅さに慣れると『零』が呆気なく感じるくらいで。あと、「マンガというジャンルそのものの根本」が「リアリズムを超えたナンセンスやシュールなパワー」「何でもアリのムチャクチャさ」という考え方は『アジアンコミックパラダイス』の時から変わっていないようだ。また夏目房之介に突っ込まれなきゃいいけど。
…福本作品の読者としては今回の『エンサイスロペディア』を読んでいて「が… ダメッ…!」と思ってしまったよw
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