YOUとIとで友愛だ。
唐沢俊一『裏モノ日記』(アスペクト)P.251より。2000年3月24日の見出し「リベルテ、エガリテ、ジャジャジャジャーン」の解説にこんなことが書いてある。
元ネタはフランス革命の三大理念、「リベルテ、エガリテ、フラタルニテ(自由・平等・博愛)」と『ハクション大魔王』。なかなか理解と教養のいるシャレ。
ダジャレはよくできていると思うが、残念ながら三大理念が間違っている。リベルテ(liberté)=「自由」、エガリテ(égalité)=「平等」は正しい。 だが、フラタルニテ(fraternité)を「博愛」とするのは正しくない。フラタルニテは「友愛」または「同胞愛」と訳すべきである。ちなみにフランス語で「博愛」は“philanthropie”である。
実はこの話は、呉智英の読者ならよく知っているはずである。呉氏は『サルの正義』(双葉文庫)の中で「自由・平等・博愛」というのは誤りであるとして、民主主義に疑問を投げかける文章を書いているのだ。唐沢俊一も呉氏の本を読んでいるはずなのだが…。
それに呉氏の本を読んでいなくても、「博愛」が誤訳であることは十分に気づくことができる。「フラタルニテ」は英語だと「フラタニティ」(fraternity)だが、フラタニティといえばアメリカの大学の学生団体のことで、イエール大学の「スカル&ボーンズ」なんかは一種の秘密結社のように思われている(実際はそんなおどろおどろしいものではないらしい)。「と学会」のメンバーなら「スカル&ボーンズ」が登場する陰謀論を知っているんじゃないか?と思うのだが。また、アンジェリーナ・ジョリーが大変カッコよかった映画『ウォンテッド』に登場する秘密組織の名前も「フラタニティ」である。…こういう知識があれば、「フラタニティ」という言葉が「博愛」にそぐわないと気づくことは出来るはずなのだが、唐沢俊一には無理な注文なんだろうか。まあ、世間一般でも「自由・平等・博愛」という誤解が広がってしまっているので、唐沢も鵜呑みにしてしまったということなんだろうけど。なお、「フラタルニテ」については浅羽通明『右翼と左翼』(幻冬舎新書)でも詳しく説明されている。
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