唐沢俊一検証blog

唐沢俊一氏の検証をしてきたブログ(更新は終了しました)

唐沢俊一のネタの使い回し・その7。

唐沢俊一キッチュワールド案内』(早川書房)P.23〜24

 『新人国記』という書物がある。岩波文庫の『山家鳥虫集』という本の中に抜粋収録されているが、これは元禄時代、関祖衡という人物によって編まれた本で、当時の日本の各国の土地風原文ママと、そこに住まう人々の人がらを記した書物である。それはいいのだが、その記述を、どうも近国の住民からの聞き書きで構成したらしく、どこの地の描写も、そこの住人が読んだら怒るぞ、と言うような、辛辣な悪口になっている
 例えば、駿河(現・静岡県中央部)の国風は、
「人の気狭くして、しかも実少なし。(略)されども常に諂ふ気質あるものは多く、義理を思ひて身を立つるものは少なし。すべて威厳おほく、互ひに人をいやしめおとす。更にしまりなき風なりとぞ」
 神君家康の出生地もさんざんである
(中略)
 出雲(現・島根県東部)。
「善悪邪正ともに仏神に祈りて、加護をたのみとする風なり。(略)神は非礼を受けず、正直の首(こうべ)にやどることを知らず。愚昧の心なりとぞ」
(中略)
 ……ひどい書かれようである。もちろん、褒めてある国もたくさんあるのだが、読んでいてこの毒舌の方が数倍して心地よいため、印象に残らない。昔の人間の他国誹りは、素朴なナショナリズムを形成して自分たちのアイデンティティ確立に役だっていたと言える。

唐沢俊一『ダメな人のための名言集』(幻冬舎文庫)P.188

『人国記』は武田信玄の愛読書だったといわれる本で、当時の日本の各国の土地風俗と、そこに住まう人々の人柄を記した書物である。それはいいのだが、その記述を、どうも近国の住民からの聞き書きで構成したらしく、どこの地の描写も、そこの住人が読んだら怒りだしそうな、辛辣な悪口になっているところが大変ユニークである。例えば、駿河国の国風は、
「人の気狭くして、しかも実少なし。(略)されども常に諂ふ気質あるものは多く、義理を思ひて身を立つるものは少なし。すべて威厳おほく、互ひに人をいやしめおとす。更にしまりなき風なりとぞ」
 などとなる。神君家康の出生地もさんざんである。日本発祥の地ともされる出雲国も、
「善悪邪正ともに仏神に祈りて、加護をたのみとする風なり。(略)神は非礼を受けず、正直の首(こうべ)にやどることを知らず。愚昧の心なりとぞ」
 とまあ、ひどい書かれようである。もちろん、褒めてある国もたくさんあるのだが、読んでいてこの毒舌の方が数倍心地よいため、印象に残らない。昔の人間の他国誹りは、素朴なナショナリズムを形成して自分たちのアイデンティティ確立に役だっていたと言える。

…『キッチュワールド案内』は2002年12月に出版され(それ以前に雑誌に連載されたものが収録されている)、『ダメな人のための名言集』の元になった『壁際の名言』(海拓舎)は2003年7月に出版されている。ちなみに、『ダメな人のための名言集』の担当編集者は「トテカワさん」こと山田京子さん(「トテカワさん」については「唐沢俊一ワールド案内(ガイド)」を参照)。
 なお、駿河を「神君家康の出生地」としていることについては、7月18日の記事で指摘済みである。

キッチュワールド案内(ガイド)

キッチュワールド案内(ガイド)

ダメな人のための名言集 (幻冬舎文庫)

ダメな人のための名言集 (幻冬舎文庫)

人国記・新人国記 (岩波文庫)

人国記・新人国記 (岩波文庫)