パクリカル・アニマルズ&ダコタハウスのごたごた。
唐沢俊一・ソルボンヌK子『カルトの泉』(ミリオン出版)第2話「シャロン・テート殺害事件&ジョン・レノン殺害事件」にはおかしなところがいろいろある。
まず、P.26でチャールズ・マンソンが「音楽プロデューサーのメルチャーさん」に自作の曲を売り込みに行ったところ、
あー耳が腐る!お前なんか相手にできねーよ
と門前払いされたかのような描写がされている。そして、そのことを恨んだマンソンがメルチャーの屋敷を襲ったのだが、メルチャーは既に引っ越した後で、代わって移り住んでいたシャロン・テートが殺されてしまったと作中では描かれている。
しかし、テリー・メルチャー(Terry Melcher )はマンソンの曲をレコード化しようとそれなりに尽力していたようなので、この描写は問題がある(だから、マンソンは逆恨みしていたのだ)。ちなみに、テリー・メルチャーはドリス・デイの息子である。なお、この「シャロン・テート殺害事件&ジョン・レノン殺害事件」では、マンソンがビートルズに影響を受けたことしか書かれておらず、マンソンと実際に親交のあったデニス・ウィルソン(ブライアンの弟)のことはスルーされている。…ビーチ・ボーイズは唐沢俊一には難しすぎたのだろうか。
次に、P.23で、
ヘルター・スケルターとは…ハルマゲドン(世界最終戦争)のことだ
としたうえで、P.27で
ハルマゲドンに備えるのだ!
黒人と白人の戦争が始まる!最初は黒人が勝利するが最終的に勝利するのは我々なのだ!!
そのためにもまず白人を殺すのだっ!!
白人に死を!!
と書いてあるのだが、ここは「ハルマゲドン」より「ヘルター・スケルター」で通した方がいいと思う。「ヘルター・スケルター」はマンソンを象徴する言葉なんだから。それから、マンソンの考えた最終戦争は「黒人と白人が戦い、黒人が勝利するが、黒人には世界を支配する能力が無いので、マンソンに指導者の座を譲る」ということらしい。…ここをきちんと説明しないとトンデモ理論の面白さがだいぶ減ってしまうと思うんだが。
次。P.28には
実行犯のうち検察に協力した1人を除く全員に
死刑!
でもその後カリフォルニア州で死刑が廃止される
今も服役中です
とあるが、マンソンに死刑判決が下された翌年の1972年に連邦最高裁で死刑制度を違憲とする判決がでたため、カリフォルニア州で死刑制度が廃止され、それに伴いマンソンの刑も終身刑に減刑されたことは事実である。しかし、その後、1976年に連邦最高裁で死刑制度を合憲とする判決が出たため、カリフォルニア州では死刑制度が復活している。シュワルツェネッガーが「クリップス」の元メンバーの死刑囚に恩赦を出さなかった話とか聞いてなかったんだろうか。
P.29。
さて…
シャロン・テート事件もあって
『ローズマリーの赤ちゃん』は「呪われた映画」と呼ばれるようになった
唐沢「しかしその呪いは事件の後も続いたのである…」
この映画のロケ地に使われたマンションで1980年12月8日に殺人事件があった
殺されたのはそのマンションに住んでいた元ビートルズのジョン・レノンだった!!
K子「自分と因縁のある映画だって知ってたと思うんだけど…何で住んでたのかな?」
では、ジョン・レノンと『ローズマリーの赤ちゃん』の「因縁」について考えてみよう。
殺害された当時ジョンはダコタハウスに住んでいた
↓
かつてダコタハウスで『ローズマリーの赤ちゃん』のロケが行われた
↓
『ローズマリーの赤ちゃん』の監督はロマン・ポランスキー
↓
ポランスキーはかつてシャロン・テートと結婚していた
↓
シャロン・テートはマンソン・ファミリーに殺害された
↓
マンソン・ファミリーはビートルズに大きな影響を受けていた
…これって「因縁」かなあ?もしこのことを気にしてジョンがダコタハウスに入居するのを嫌がったとしたらオノ・ヨーコに怒られてたんじゃないか?ジョン・レノンほどの人物ならこの程度の「因縁」はいくらでもありそうな気がする。
最後。P.30でジョン・レノンを殺害したマーク・チャップマンが、「今や僕らはイエスより人気があるよ」というジョンの発言が許せなかったのでジョンを殺害したと書いてあるが、以前唐沢俊一はチャップマンの犯行は『ライ麦畑でつかまえて』のせいであるかのように書いていたじゃないか(詳しくは10月11日の記事を参照。なお、唐沢の『ライ麦畑でつかまえて』の紹介は本当にトンデモないので、未読の方はぜひ読んでいただきたい)。一体どっちなんだ。
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