Wボケに対応するのは大変だろうな。
唐沢俊一『猟奇の社怪史』(ミリオン出版)には、月刊「ラジオライフ」に連載されているコラム『唐沢俊一の古今東西トンデモ事件簿』からも4本収録されている。そして、『猟奇の社怪史』に収録されたコラム4本はすべて『唐沢俊一のトンデモ事件簿』(三才ブックス)にも重複して収録されている(例の青酸カリについてのガセビアを披露したコラムも含まれる。詳しくは9月30日と10月1日の記事を参照)。どうして重複しているのか不思議に思ったので、「ラジオライフ」に電話したときに豊田拓臣さんに聞いてみたら「ミリオン出版にお願いされた」とのことだった(この電話については10月7日の記事を参照)。ちなみにこのとき、豊田さんに「そんなことを聞いてどうするんですか」と聞かれて、「いやあ、どうしてなのか不思議に思ったものですから」と適当に返事をしてしまったが、よく考えてみると2年前に出た単行本に収録されているのとほとんど同じコラム(若干構成が変わっている)を読まされたら怒ってもおかしくないような気がする。しかも、『唐沢俊一のトンデモ事件簿』は連載された『古今東西トンデモ事件簿』の中から「厳選した23本のコラムを収録」(「ラジオライフ」11月号より)しているというから、『猟奇の社怪史』に収録されたものは除外してもよかったのではないだろうか。まあ、厳選したわりにはパクリあり(詳しくは10月7日と10月14日の記事を参照)、IRAとショーン・コネリーについて完全に間違った文章(詳しくは10月4日の記事を参照)も収録されているのだが。
さて、今回は『猟奇の社怪史』を読んでいて思わずずっこけてしまったところを紹介する。唐沢俊一は『猟奇の社怪史』第2講「稀代の“少女たらし”樋口芳男の意外な証言」で、永松浅造『犯罪実話 後悔先に立たず』(鷺ノ宮書房)から誘拐事件の記事を紹介しているのだが、その中で登場人物がこのようなことを言っている(小説仕立てになっているらしい)。
「だって、世界のあらゆる方面の支配権の実力を持っているユダヤ人は、ユダヤ人以外の人類に対する復讐として、三S政策をとっているというじゃありませんか。セックス、スポーツ、シネマと。スポーツは奨励すべきものですが、あの日本人の武士道を無視したいろいろのスポーツの流行はいかがでしょう」
…まあ、トンデモな内容である。ユダヤ陰謀論とはあまりにもわかりやすい。しかも、もうひとつ大ボケをかましている。「三S」とあるが、セックス=sex、スポーツ=sports、はいいとしても、シネマ=cinemaである。…やっちゃったな。戦後の日本で行われたとされる「3S政策」とは「セックス・スポーツ・スクリーン」なので内容は合っているのだが。さあ、こんなわかりやすいボケに唐沢俊一はどのように突っ込むのか? そう期待していると、
ユダヤ陰謀論を唱える母親というのもなかなか凄い。
こう書いてあるだけ。スルーしちゃったよ。「シネマは“C”だろ!」「おまえもちゃんとつっこめよ!」とトリオ漫才のツッコミみたいに言いたくなってしまった。いくら唐沢俊一といえども「シネマ」の頭文字を“S”だと思ってはいないと信じたいけど。
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